熊本豪雨関連死、初の申請 人吉市、被災者2人の遺族

熊本日日新聞 | 2020年11月28日 09:00

 7月の熊本豪雨後に死亡した被災者2人の遺族が、災害によるけがや病気の悪化などが原因で亡くなった「災害関連死」と訴え、人吉市に災害弔慰金の支給を申請していることが27日、分かった。現時点で認定されれば、今回の豪雨災害で初の災害関連死となる。

 同市福祉課によると、申請があったのは9月下旬と11月中旬。被災者の性別や年齢、死因、被災状況などは「個人情報に関わるため、明らかにできない」としている。この2件のほか、申請の手続きに関する相談も1件あったという。

 市は9月、水害と死亡との因果関係が不明なケースが生じることを想定し、医師や弁護士ら専門家による審査委員会の設置条例を制定。市単独、または県が設置を検討している他自治体との合同審査会で対応するが、時期は未定としている。

 災害関連死は、遺族の申請に基づき市町村が審査。認定されると、最大500万円の災害弔慰金が支給される。2016年の熊本地震では、直接死50人に対し、関連死は4倍超の218人(今年10月末現在)に上る。避難生活の長期化などが要因という。

 今回の豪雨災害で仮設住宅を設けた7市町村のうち、人吉市以外にまだ申請はない。ただ、球磨川の支流が氾濫して入所者14人が犠牲となった球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では、14人のほかに、入所していた80代と90代の女性2人が避難・搬送先の病院で9月上旬に相次ぎ死亡したという。

 園を運営する法人代理人の中嶽修平弁護士は「高齢の入所者にとって、外に出ること自体がリスク。何らかの影響はあったと思う」と強調。村も専門家による関連死の審査組織の設置を検討している。(臼杵大介)