衆院選、感染症と人権問う一票 水俣病、ハンセン病の当事者「政治は課題と向き合って」

熊本日日新聞 | 2021年10月18日 11:30

水俣病不知火患者会が起こした国賠訴訟の経過についてオンラインで説明する園田昭人弁護団長(左)=8月28日、水俣市

 新型コロナウイルス禍は、救済を求める水俣病被害者や、差別の解消を目指すハンセン病元患者の活動を大きく制約した。双方の当事者は、長年解決しない課題に政治がもっと向き合うよう求めている。

 国と熊本県、原因企業チッソに損害賠償を求め、水俣病不知火患者会が2013年に起こした裁判は、新型コロナの影響で口頭弁論が開かれずに長期化。元島市朗事務局長は「千人以上の原告が救済を求めている。この現状を受け止め、解決に道筋を付けるのが国会議員の責務だ」として政治の関与を求める。

 解決には被害の全容解明が欠かせないとして、被害者側は住民健康調査を求めている。しかし、09年施行の水俣病特別措置法で調査が課された政府は「手法を開発中」と繰り返し、実現には至っていない。「被害は放置されたまま」と憤る元島事務局長は、水俣病の解決に向けた政治の「本気度」に注目している。

 患者の高齢化に目を向けてほしいと訴えるのは、胎児性患者の松永幸一郎さん(58)。症状が悪化したため、チッソとの協定に基づく補償が増額されるランク変更を申請したが、4回にわたり棄却された。「以前は歩くことができたが、今は車いす生活。それでもランク変更が認められない。納得いかない」

 「胎児性小児性患者・家族・支援者の会」事務局長の加藤タケ子さん(71)は、加齢によって症状の悪化が見えにくくなる実態があると指摘。「健康被害を継続的に調べる必要がある。水俣病を環境省の原点と言うなら、政府も国会議員も目をそらさないでほしい」と呼び掛ける。

 国の隔離政策で差別や偏見にさらされたハンセン病の啓発も、コロナ禍で滞っている。感染防止のため全国の国立療養所に入れず、入所者の体験を直接聞けないからだ。合志市の菊池恵楓園入所者自治会は、当事者が体験を語ったDVDを作成し、4月から教育機関などに貸し出している。近く発行予定の写真集には、園に保存されたカルテなどの貴重な資料を掲載する。

 入所者の平均年齢は85歳を超え、当事者が体験を語る機会は失われつつある。各療養所に残る膨大な資料をどう活用するか。「従来の語り部活動を継続するのは難しい」と懸念する太田明副会長(77)は、国の積極的な関与を求める。

 コロナ禍を巡っては、感染者らに対する差別が表面化。太田さんは「感染症と人権意識が、これほど問われる選挙はない。国が同じ過ちを繰り返さないためにも、ハンセン病問題に注目してほしい」と訴える。(鎌倉尊信、臼杵大介)

新型コロナウイルス感染防止のため、立ち入り規制が続く国立療養所・菊池恵楓園。入り口に看板を立て、来園者らに呼び掛けている=9月26日、合志市

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