中国の中長期政策 国際社会と協調欠かせぬ

2020年11月11日 07:11

 中国が経済運営などの新しい計画で、輸出主導から内需拡大への転換を打ち出した。米国の対中強硬政策は新政権になっても変わらないとみられ、長引く米中対立をにらんだものと言える。しかし、内需を重視していくにしても、国際社会との協調をおろそかにはできないはずだ。

 このほど開いた中国共産党の重要会議で、来年からの5カ年計画と2035年までの長期目標を採択した。5カ年計画によると、国内経済を活性化して内需拡大を図りつつ、これまで通りの対外経済との2本建てで、「双循環」を推進するという。

 貿易摩擦をはじめとする中国と米国の対立は長期化している。新型コロナで世界経済が打撃を受けるなどの要因もあり、外需に頼りすぎるのは危険との判断があるようだ。

 長期目標では、1人当たりの国内総生産(GDP)を「中レベルの先進国」並みに引き上げるとした。サプライチェーン(部品の調達・供給網)の強化や技術革新を最重要課題とした。

 軍事面では「国家主権を防衛する戦略能力を高める」と強調。新たな党幹部人事は発表されず、習近平政権の「長期化への布石」と取り沙汰されている。

 中国は1978年に改革・開放政策に転換し、輸出型の加工貿易で経済を発展させた。2001年には世界貿易機関(WTO)に加盟し、グローバル化の恩恵を最大限に受けて急成長してきた。

 その一方、国内的なナショナリズムの高まりなどを受け、外に向かっての強権的な振る舞いが目立つようになった。南シナ海の実効支配などだ。香港への統制強化や、国内のウイグル族弾圧なども問題視されている。

 米国のトランプ共和党政権は、貿易やハイテク分野などで中国と厳しく対立。次期大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン氏も、経済・安全保障の両面で中国に「国際的なルールを守らせる」としている。共和党から民主党へ政権交代しても、米国の対中政策に大きな変化はないとみられる。伝統的に人権問題に厳しい民主党はむしろ、香港やウイグル族問題をめぐって圧力を強める可能性すらある。日本も米中関係のはざまで難しい対応を迫られるが、基本的に米国とは認識を共有しておく必要がある。

 中国がこの先、経済を内需重視型に修正するとしても、多くを対外貿易に依存することに変わりはないはずだ。経済的な恩恵を受けながら、他国とのあつれきを顧みない外交を強行していては、国際社会の信頼は得られない。自国中心主義に陥らず、多国間主義と国際協調を重んじるべきだ。

 長期目標には、低炭素社会の実現も掲げられている。習近平国家主席は先に2060年までの二酸化炭素(CO2)排出量「実質ゼロ」を国際公約している。中国と米国は世界第一と第二のCO2排出国だ。ともに率先して地球温暖化対策をリードしてもらいたい。