通潤橋の通行どうする? 熊本地震で破損、「渡りたい」声根強く

熊本日日新聞 | 2021年10月14日 13:33

社会科見学の小学生や観光客が見守る中、放水する通潤橋=山都町

 熊本県山都町の観光の目玉、国指定重要文化財の通潤橋。熊本地震で一部が破損したため橋の上への立ち入りが禁止されているが、町民や観光客の間には「以前のように橋を渡りたい」と望む声は根強い。このため、町教育委員会が設置した通潤橋保存活用検討委員会の活用部会で、可否を巡り白熱した議論が続いている。

 10月上旬。橋から迫力満点の放水が始まると、集まった観光客や社会科見学の小学生が歓声を上げ、スマートフォンを掲げて盛んにシャッターを切っていた。

 橋を望む通潤橋資料館職員の石山信次郎さん(78)によると、多くの観光客から「橋を渡りたいが、いつ再開するのか」と尋ねられるという。橋の上では、水を通す石管を見ることができ、「観光客や小学生に水路橋の構造を知ってもらうために、可能なら橋を渡ってほしい」と石山さん。

 町教委などによると、以前は規制はなく、近隣住民が散歩していたほか、観光客も自由に橋を渡ることができた。熊本地震で石積みの一部がずれたり亀裂が入ったりしたため、町が立ち入りを禁止した。

 その後、関係者の間で浮上したのが、橋を渡る上での安全確保だ。水路橋として造られた橋には欄干がなく、転落の危険がつきまとう。近年、全国では、橋がない用水路やため池の転落事故で、施設所有者の管理責任を認める判決が相次ぐ。通潤橋では転落事故の記録はないが、文化財の橋を改変して新たに欄干を設けることは不可能で、「安全確保と公開のジレンマ」(町教委)が生じている。

 町や町教委、文化財関係、地元などで構成する活用部会(座長・田中尚人熊本大准教授)は、今年2月から本格的に議論を開始。関係団体から意見を聴いたほか、観光客へアンケートするなど広く意見を集めながら検討を重ねている。

 検討会は橋の公開について、(1)以前のように自由に通行(2)橋の両端に警備員を置き監視しながら通行(3)ガイドが同行して通行(4)完全に通行禁止-の4案をつくって幅広く議論。10月上旬の会合では「通行には警備員かガイドが必要で、そのための費用は利用者に求めても良い」とする、検討会としての意見をまとめた。

 橋を所有・管理する町は今後、検討会の意見を踏まえ、橋の公開の在り方を検討。通行を再開すると判断した場合には、必要な予算を確保して、来春にも渡れるようにする考えだ。

 検討部会メンバーの山下泰雄・町観光協会長は「長年、多くの人が守ってきた文化財には、高い価値がある。これからも拙速な結論は避け、どんな保存・活用が良いのか丁寧に議論していく必要がある」と話している。(鹿本成人)

 ◇通潤橋 長さ約75メートル、高さ約20メートルの石造りのアーチ橋。江戸時代後期の1854年、白糸台地に農業用水を送るために築かれ、現在も使われている。1960年、国重要文化財に指定。

5日、町中央公民館であった通潤橋保存活用検討委員会の活用部会=山都町

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