(6)「要支援者」リスク把握、難しさ痛感 高齢者避難、地域任せ 

熊本日日新聞 | 2020年9月2日 00:00

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球磨川が氾濫し、甚大な被害が出た人吉市下薩摩瀬町。町内だけで高齢者5人が犠牲になった=7月16日

 熊本県南部を中心とした豪雨災害の犠牲者65人のうち、85%に当たる55人は65歳以上の高齢者だった。この中には自力で避難できない「要支援者」以外の人も多数含まれており、高齢者らの避難支援の難しさを印象付けた。

 「もう水がそこまで来ています。避難してください」

 7月4日午前7時ごろ、人吉市下薩摩瀬町の民生委員、赤池美重子さん(63)は近隣の高齢者や要支援者のいる5軒を回り、大声で呼び掛けた。自宅前の道路は冠水し始め、膝まで上がっていた。

 下薩摩瀬町の要支援者は、介護が必要な高齢者や障害者ら約40人。町内会では民生委員や隣保班長、近隣住民らを支援者とし、いざという時には要支援者1人につき2人で避難の手助けをする態勢を整えていた。

 その結果、要支援者は全員無事。しかし、70歳以上の5人が犠牲となった。いずれも高齢夫婦世帯で、自宅外に避難しようとして濁流にのまれた。

 一方、入所者14人が亡くなった球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」は、災害時の避難準備・高齢者等避難開始の発令で要配慮者を避難誘導するよう避難計画で定めていた。

 村が発令した7月3日午後5時には、夜勤体制に入っていたため職員は日中より少ない6人に。入所者ら70人の高齢者がいた。午後10時20分に避難勧告、4日午前4時50分には大雨特別警報。だが、手伝った人たちによると、2階へ本格的な避難を始めたのはさらに遅かったという。入所者51人を救出したものの、浸水が速く、車いす利用者もいたため全員が逃れることは難しかった。

 人吉市下薩摩瀬町の場合、赤池さんは「要支援者に該当しない高齢者の避難の難しさを実感した」と話す。

 災害対策基本法は、要介護の高齢者や障害者ら自力避難が難しい「避難行動要支援者」の名簿作成を市町村に義務付ける。国や県は、名簿記載者の具体的な避難方法を示した「個別計画」の作成を呼び掛けている。

 国の昨年6月時点の調査では、県内は全45市町村が名簿を作成。個別計画も人吉市や球磨村を含む19市町村(42%)が名簿記載者全員について作成済みとしており、全国平均の12%を上回る。

 しかし、どこまでを要支援者とみなして名簿に記載するかは各市町村の判断に委ねられている。人吉市で亡くなった高齢夫婦のうち、妻は足が不自由だったものの夫は元気だったため、2人とも要支援者と位置付けられていなかった。

 熊本大大学院先端科学研究部の竹内裕希子准教授(地域防災)は「名簿に載っていないが、支援が必要な高齢者らをどうやって把握し支えるかは、民生委員や自主防災組織の裁量に任されているのが実情。日頃から地域で顔の見える関係をつくり、災害時の行動を考えておくことが大事だ」と指摘する。

 大規模災害が毎年のように繰り返され、竹内准教授は「災害リスクを含めた地域の現状を客観的に、よりシビアに把握する必要がある」と話す。(平澤碧惟、森紀子)

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