母親、病院職員との接触恐れ ゆりかごの外に子ども置く「危険な預け入れ」

熊本日日新聞 | 2020年9月3日 10:03

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慈恵病院が設置している「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)=熊本市西区

 「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)に、保護責任者遺棄の可能性のある危険な預け入れがあったことについて、運営する慈恵病院(熊本市西区)の蓮田健副院長は2日までに、この子どもの母親が預けたのは2人目で、自宅で子どもを産んだ後、病院職員らとの接触を恐れて「ゆりかご」の外に子どもを置いたと明らかにした。身元を明かしたくない母親の思いと、子どもが出自を知る権利の両立が難しく、子の命にも危険が及ぶ恐れがあることが浮き彫りとなった。

 ゆりかごに子どもが預けられると、ナースステーションなどのブザーが作動する。女性が初めて預けた際は職員が駆け付けて子どもを保護し、女性の身元を聞き取った。女性の地元の行政機関にもつないだ。

 しかし、今回はゆりかごの中には預けず、病院敷地内に置いて去った。前回の経験から、身元を隠すことを優先したとみられる。

 子どもは低体温状態だったが、命に別条はないという。だが、扉外に置き去りにした場合、生命は危険にさらされる。このため、「ゆりかご」を検証する熊本市の専門部会は1日、「危険な預け入れであり、保護責任者遺棄の可能性がある」と指摘した。

 しかし、蓮田副院長は「預けた後に女性から病院に電話があり、遺棄には当たらない。女性を責める事態になってはならない」と強調する。通報を受けた熊本南署も保護責任者遺棄罪には当たらないと判断した。

 ゆりかごでは過去にも扉外に子どもが置かれ、保護責任者遺棄を疑われる事例があった。市の専門部会は第4期(14年4月~17年3月)報告書で「預入時の安全性、違法性について法的に整理する必要がある」と警鐘を鳴らしていた。

 「今まで身元を明かしてもらうよう母親と必死に接触していたが、関わり方を考え直したい」と蓮田副院長。「預け入れの背景には、親の虐待や精神疾患、発達障害など、いろいろな問題がある。預けざるを得ない人が一定数いる」と理解を求めた。(深川杏樹)