(2)治水安全度で目標設定 「80年に1度」の流量上回る

熊本日日新聞 | 2020年10月5日 00:00

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 球磨川をどれぐらい制御できるかという治水対策の“実力”を示す「治水安全度」について、国土交通省八代河川国道事務所の森康成副所長(河川担当)は「現状では人吉地点で『年超過確率3分の1から5分の1』」と説明する。

 治水安全度は、河川工学で用いられる確率の概念だ。年超過確率3分の1は、一般には「3年に1度起きる恐れがある大雨まで現状の治水対策で安全に流せる」と表現される。

 2008年9月、蒲島郁夫知事は川辺川ダム計画の「白紙撤回」を表明。これを受けて、国と県、流域12市町村は09年1月から6年にわたって「ダムによらない治水を検討する場」と名付けた会合を設け、「現実的な治水対策」を積み上げた。

 堤防の強化や河川の掘削、宅地のかさ上げなどを進めた結果、現時点で安全に流せる流量は、基準地点の人吉で毎秒3600トン。これを治水安全度で表現すると「3~5年に1度」となる。

 ダムによらない治水を検討する場で決めた対策は全て完了したわけではなく、仮に完了しても、人吉地点での治水安全度は毎秒4500トン。治水安全度は「5~10年に1度」にとどまるという。

 そこで国と県、流域12市町村は15年3月、今度は「球磨川治水対策協議会」を設けて、人吉地点で毎秒5700トンの「20~30年に1度」の治水安全度を目指して、ダム建設を除いた対策の組み合わせを議論していた。今回の水害はその途上で起きた。

 そもそも、国が1953~2005年の降雨データを基に、07年に定めた球磨川の「河川整備基本方針」は、長期的な治水安全度の目標を人吉地点で毎秒7000トン(80年に1度)、下流の八代・横石地点で毎秒9900トン(100年に1度)と設定している。

 ところが、今回の豪雨での人吉地点でのピーク流量は、国が示した速報値段階で毎秒8000トン。河川整備基本方針の設定を1000トンも上回っており、さらに多かったとみる専門家も複数いる。

 ただ、河川整備基本方針の見直しについて、森副所長は「豪雨について検証している段階。現時点では何とも言えない」と言及を避けた。

 一方、「治水安全度」に固執する国の考え方自体を疑問視する専門家も出てきた。

 京都大の今本博健名誉教授(河川工学)は「◯年に1度の対象洪水を設定して『それを超えたら、はい、おしまい』では、真の治水対策にはならない」と指摘する。気候変動で雨の降り方も変化しており、既存の「〇年に1度」が「現実と離れつつある」と強調する。

 今本氏は「治水安全度を達成するために洪水調節の数字を積み重ねることばかりに目を向けず、できる対策を毎年実施しながら、とにかく人が亡くならない治水を追求するしかない」と力を込める。(太路秀紀)

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