「ダムあれば」は責任回避 100年先考え、検証緻密に 【元相良村長・徳田正臣氏】

熊本日日新聞 | 2020年10月6日 00:00

image
◇とくた・まさおみ 2008年、相良村長に初当選。同年8月に「ダムは容認し難い」と述べ、川辺川ダム建設に反対する考えを明らかにした。その4日後、当時の田中信孝人吉市長が白紙撤回を表明。地元の首長2人がダム反対の見解を示し、蒲島郁夫知事の決断に影響を与えた。村長を3期12年務め、今年3月の村長選で敗れた。同村在住。61歳。

 川辺川ダム建設予定地の相良村長として2008年にダム反対を表明した徳田正臣氏。7月の豪雨で地元は甚大な被害を受けたが、「ダムは不要」との立場は変わらない。球磨川の治水対策の協議が進む中、「100年先を考え、緻密な検証をするべきだ」と冷静な議論を求める。(聞き手・臼杵大介)

 -なぜ、ダムに反対したのですか。

 「私自身の村づくりの構想にダムの存在はなかった。ダムがあれば川辺川は壊され、地域の豊かさは保てない。当時、ダムを造らないというのは世界的な流れだった。清流より命を守るべきだという人もいたが、命を守ることはダムを造ることと同じではない」

 -今回の豪雨は前例のない規模でした。

 「世界的な気候変動の中で、(戦後最大の被害となった)1965年を超える水害が起きるかもしれないと心配していた。国は一定の検証をしたようだが、水害の原因、状況は把握し切れていない。研究機関による客観的な検証が必要だ」

 「蒲島郁夫知事はダムも『選択肢の一つ』と発言したが、まだダムに言及するような状況ではなく、結論ありきのことを言ってしまったように感じる。水害の検証が十分でないままダムを造っても、いい結果にならない」

 -「ダムによらない」治水の議論は結論が出ませんでした。

 「流域首長による議論の場は結論を出す機関ではない。建設するのはあくまで国。ただ国は、ダム計画を正式に中止するための法制度を整えず、全てが中途半端だった。覚悟が感じられなかった」

 「国は何十年もの工期、何兆円もの事業費が必要な案を示し、ダムしかないと誘導しようとする思惑すら感じた。ダムは中止の方向に持って行くべきだ」

 -ダムがあれば、被害を抑えられたという意見もあります。

 「ある程度の流量はカットできたかもしれない。ダムの一定の効果は認めるが、緊急放流で被害が拡大したかもしれないし、全く役に立たなかったかもしれない。全て仮定の話で、『かもしれない』を断定的に捉えるのは間違いだ」

 「今回、どの自治体も避難勧告、避難指示が遅かった。『ダムがあれば被害を抑えられた』と言うのは、治水対策を進めなかったことへの責任回避の言葉でしかない。ソフト対策が十分でなかったのに、ハードの話ばかりしてもしょうがない」

 -今でもダムは必要ないと思いますか。

 「今の異常気象の中で、治水を完全に制御することはできない。ダムの機能は100年たてば低下し、効果も発揮できなくなる。地域の安心安全のためには、ダムを造る以外にするべきことがある」

 「河川敷に住む限り、水害は避けられない。命を守るためには1軒でも多く安全な場所に移転してもらうのも選択肢の一つ。時間はかかるだろうが、そうした発想も必要だ」

 -国、県に訴えたいことはありますか。

 「ダムを造るとすれば、地域社会は賛成、反対で分断され、再び着地点が見えない議論をしなければならなくなる。もう、ダムに戻してはならない」

ランキング

イベント情報