(3)「河川整備計画」未策定 地元主導で治水対策議論を

熊本日日新聞 | 2020年10月6日 00:00

image
2階席も含め満席状態で開かれた川辺川ダムを考える住民討論集会=2001年12月9日、相良村総合体育館

 球磨川は、全国に109ある国管理の1級水系河川の中で、唯一、中期の具体的な治水対策を盛り込んだ「河川整備計画」が策定されていない川だ。

 1997年、河川法が改正され、それまでの水系ごとの「工事実施基本計画」に代わり、河川管理者は長期的な治水や河川の保全・利用の方向性を記した「河川整備基本方針」と、基本方針に沿って20~30年後の治水の目標や個別事業を記した河川整備計画を作ることになった。

 しかし、川辺川ダム建設中止を決めた球磨川の河川整備計画は、国と県、流域12市町村が2015年3月に設けたダム建設以外の治水策を検討する「球磨川治水対策協議会」の議論の後に「あらためて検討する」と確認した。そのため、対策協が結論を出せていない現在まで未策定だ。

 そもそも基本方針と整備計画には策定の手続き上、大きな違いがある。

 整備計画策定には、関係自治体や学識者に加えて、関係住民からの意見聴取が必要。対して基本方針は、中央で審議会の意見を聴いて定めるため、地元の声は届きにくい。

 こうした“2階建て”の制度について、国土交通省河川計画調整室の齊藤正徳課長補佐は「基本方針は、国全体のバランスを考慮して客観的なデータを基に専門家で決めるため、個別の地域ごとに住民の意見を聴く形にはなっていない」と説明。整備計画については「地域住民の安全や環境に直接関わるため、地域の意見が重要になる」とする。

 一方、川辺川ダム建設に反対し、地元主導での河川整備を求める市民団体「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の事務局長、土森武友さん(59)は「川を一番知っているのは地元住民。その声を河川整備基本方針に反映しない今の制度はおかしい」と批判する。

 土森さんは、県が主導して01年から03年にかけて9回にわたって開かれた「川辺川ダムを考える住民討論集会」に参加した。第1回は相良村の総合体育館にダム反対派、推進派、国交省、県など約3千人が集まり、7時間を超える論戦が展開された。

 巨大公共事業の是非を巡り、「直接民主主義」の手法を採った住民討論集会。明治期に制定された旧河川法の時代から中央主導で進められてきた重要河川の治水議論への“アンチテーゼ”となった。結論は出なかったものの、土森さんは「ダム問題に対する県民の理解を深める効果があった」と確信している。

 今回、豪雨の検証が国・県と流域12市町村の首長だけで進められる現状に対し、土森さんらは強い危機感をあらわにする。「被災した住民の声を取り入れるべきだ。治水対策の結果を引き受けなければならないのは、その住民なのだから」

 その上で、かつての住民討論集会のように県がリーダーシップを発揮し、「県独自」の検証と治水対策の策定を強く求めている。(太路秀紀)

ランキング

イベント情報