(7)〝同床異夢〟の流域治水 ダム中心、国「変わりない」

熊本日日新聞 | 2020年10月10日 00:00

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白川と緑川の流域治水を話し合う協議会の初会合。流域市町村長は協議会のメンバーだが、住民代表の姿はない=9月30日、熊本市中央区

 「地域の持続的な発展につながるよう『流域治水』を徹底的に具体化すべきだ」


 今月2日、約70年の活動実績を持つ自然保護団体「日本自然保護協会」が国と県に、球磨川流域の治水対策と復旧復興について意見書を提出した。

 協会は、2001~03年に県主導で開かれた「川辺川ダムを考える住民討論集会」で、流域の自然保護について意見を述べたことはあったが、治水や復興に関する意見書は初めて。「政府が政策転換を打ち出す中、流域治水を少しでも前に進める好機と捉えた」。協会の大野正人保護部長は意見書提出の狙いをこう説明した。

 流域治水は、気候変動に伴う近年の水害の激甚化を受けて、国土交通省が7月に「転換」を打ち出した治水の考え方だ。ハードとソフト、両面の治水対策を総動員して「あらゆる関係者が流域全体で取り組む持続可能な治水」をうたう。

 菅義偉政権は、その流域治水への転換を象徴する例として、首相が官房長官時代に推し進めた利水ダムの治水利用を挙げる。大雨が予想される時、本来は発電や農業用に使うダムの水を「事前放流」して水位を低下させ、その容量分をダムにため込むことで治水に生かす。政権は「縦割り行政打破」の実例としても成果を強調する。

 ただ、7月豪雨では、球磨川水系にある利水ダムの治水利用は“不発”に終わった。

 水上村にある県営市房ダムの利水分のほか、球磨川水系に五つある利水ダム(幸野[こうの]、清願寺、瀬戸石、内谷[うちたに]、油谷[あぶらたに]の5ダム)は、5月に関係者で協定を結び、事前放流できる環境は整っていた。だが、基準を超す雨量予測が発表された段階で既にダムへの流入量が多く、水位を十分に下げられる状況にはなかったという。

 国交省は「政策転換」としつつも、「そもそも流域治水は、従来の対策にさまざまな対策をプラスするということ。ダムや堤防が治水の中心であることに変わりはない」(河川計画課)と言ってはばからない。

 これに対し、日本自然保護協会は「前時代的なダム建設を前提としない流域治水」を志向する。長年、ダム反対の論陣を張ってきた「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」代表の中島康さん(80)も「従来型のダムに頼らない治水こそが真の流域治水だ」と主張。まさしく“同床異夢”だ。

 県内四つの1級水系河川では、「豪雨の検証結果を踏まえないと協議できない」(国交省九州地方整備局)とする球磨川を除き、順次、流域治水の協議会が立ち上がり、議論が始まった。

 9月30日、熊本市を流れる白川、緑川の協議会の初会合。リモートで参加した熊本市の大西一史市長は「住民の避難行動に結びつかないと駄目だ。行政だけでなく、いかに市民に分かりやすく知ってもらえるかだ」と流域治水のポイントを指摘した。ただ、流域治水協議会のメンバーに区長ら住民代表の姿はない。(太路秀紀)=第2部終わり

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