局所的な豪雨、どこでも 線状降水帯の予測向上を 【熊本地方気象台統括予報官・奥松和浩氏】

熊本日日新聞 | 2020年10月20日 00:00

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◇おくまつ・かずひろ 鹿児島県出身。1984年入庁。予報官として鹿児島県奄美市の名瀬観測所、宮崎地方気象台、鹿児島地方気象台を経て、2019年4月から熊本地方気象台。20年4月から同気象台に4人いる予報官のトップを務める現職。56歳。

 気候変動の影響で想定を上回る規模の豪雨災害が相次ぐ中、7月の熊本豪雨も予報の雨量を大きく上回った。熊本地方気象台の統括予報官を務める奥松和浩氏に、当時の予報や観測技術の課題、防災に活用できる気象情報などを聞いた。(聞き手・堀江利雅)

 -7月3、4日の降雨予報と実際の降り方はどうでしたか。

 「4日未明にかけて九州にかかった梅雨前線上に低気圧が発生し、太平洋と東シナ海の両側から多量の湿った空気が流れ込んだ。3日午後5時に出した予報は、球磨地方と天草芦北地方の多い地点で1時間に60ミリの非常に激しい雨、24時間で200ミリとしていた」

 「3日夜から降り始め、4日の午前3時20分、芦北町で1時間に110~120ミリの猛烈な雨を解析。その後も各地で同様の雨が続いたため、各観測地点ごとに順次『記録的短時間大雨情報』を出した。24時間雨量は最大の湯前町489・5ミリ、水俣市で474・5ミリなど各地で400ミリを上回った。積乱雲が同じ場所で次々と発生して連なる『線状降水帯』が原因だった」

 -線状降水帯の予測は難しいのですか。

 「現在の技術では局所的な線状降水帯の発生の予想は非常に難しい。発生には大気中の水蒸気が大きく関係しているが、その水蒸気量の把握手段や、各層の水蒸気がどういうふうに流れるのかという実測経験が乏しい。気象庁は大学などと連携し、水蒸気量の洋上観測技術の開発や線状降水帯のメカニズムの解明などを急ピッチで進めている」

 -線状降水帯が発生している最中に、どのような発信ができますか。

 「局所的な豪雨は、線状降水帯以外にも多様な要因がある。解析には時間がかかり、その場で線状降水帯が発生していると発信はできない。リアルタイムで動く状況に対しては常に雨量計やレーダーの気象情報を追ってほしい。災害級の場合は順次、気象情報を発表しており、近年は図の多用など理解しやすさにも力を入れている」

 -大雨への備えにはどういった情報が活用できますか。

 「地域全体の予報値にかかわらず、局所的に豪雨が起きる可能性は常にどこにでもある。河川や崖などの地形、これまでの雨の降り方によっても災害の危険は各地域、世帯ごとに大きく変わる。そういった要件を踏まえて発信している『危険度分布』情報を活用してほしい。気象庁のホームページ上で常に更新している」

 「早期の避難で命を守るには適切な危機感を持ち続ける必要がある。地域の経験やその時の雨の降り方、音の異常なども判断材料だ。気象庁としても『空振り』を減らすための予測精度の向上を進めている。学校や自治体に予報官を派遣して気象情報の活用を促す講座など、気象台としても地域に入り込んだ活動を進めている」

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