清流残したい、村民の総意 ダムありき議論、違和感 【相良村長・吉松啓一氏】

熊本日日新聞 | 2020年10月22日 00:00

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◇よしまつ・けいいち 球磨農業高を卒業後、相良村役場に入庁し、教育課長や議会事務局長などを歴任。村議から村長選に挑み、2度目の立候補だった2020年3月、08年に川辺川ダム建設の反対を表明した現職の徳田正臣氏を4票差で破って初当選した。同村柳瀬。66歳。

 1966年に発表された川辺川ダム計画の建設予定地を抱える熊本県相良村。甚大な被害をもたらした7月の豪雨によって再燃している川辺川ダム建設の議論や、川辺川への思いについて吉松啓一村長に聞いた。(聞き手・小山智史、吉田紳一)

 -豪雨では、村を縦断する川辺川沿いを中心に全壊18戸、大規模半壊22戸、半壊68戸の住宅被害が発生しました。

 「経験がないような大雨で、川辺川もひどい状況だった。結果的に人的被害はなかったが、家屋や道路、農地の被害は甚大だった。職員の人手が足りない中で、復旧作業に苦労している」

 「一方、災害ごみの仮置き場や仮設住宅の建設場所を事前にある程度決めていたことは奏功した。事前の備えが発災直後の迅速な対応につながったと思う」

 -川辺川ダム計画の再燃をどう受け止めていますか。

 「ダムありきの議論になっていないか、との違和感がある。村は国や県に堤防や宅地かさ上げ、河床掘削、遊水地の整備などの治水対策を要望し続けてきたが、要望通りには実施されてこなかった。やるべき対策が約10年間進められないまま、今回の災害が起きた。このままダムについて論議を進めても村民は納得しないだろう。時期尚早だ」

 「日本一の清流である川辺川を子々孫々まで残してほしいとの思いは、(国、県、流域12市町村でつくる)球磨川豪雨検証委員会でも示した。これは村民の総意だ。川辺川は生活の一部であり、観光資源でもある。球磨川流域の市町村は、それぞれの事情を抱えている。流域の自治体が一枚岩でないのは当然だ」

 -環境に影響が少ないとされる流水型(穴あき)ダムの案も浮上しています。

 「治水対策は流域の市町村長ではなく、あくまでも知事が決めること。民意は県が集約するべきで、村として集会を開くことは予定していない。ただ、ダム計画から50年以上が経過し、世代も環境も変わった。『(多目的ダムである)当時の計画をそのまま当てはめていいのか』という意見は村民からも出ている」

 -復興をどう進めますか。

 「10月中に村復興計画策定委員会を立ち上げる。村の全4地区ごとに座談会を開くことにしており、村民からさまざまな意見が出るだろう。住宅を建設できるような土地を高台に整備するべきだったという反省もあり、可能な限り意見を集めて復興計画に反映する。また、今後も国と県には、河床掘削など今すぐにできる治水対策を要望していく」

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