コロナ感染疑いで宿泊拒否 厚労省が旅館業法の改正検討

熊本日日新聞 | 2021年09月24日 13:52

伝染病による感染が明らかな場合に宿泊拒否ができると定めている旅館業法の第5条1項

 厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染疑いがある人の宿泊をホテルや旅館が拒否できるように旅館業法を改正すべきかどうかの検討を始めた。8月から有識者による会合を開き、業界団体や専門家らから意見を聴いている。

 厚労省生活衛生課によると、宿泊客がチェックインする際に発熱など感染の疑いがある場合の対応について「近隣の医療機関などの指示に従い、客室内での待機などを要請する」と事業者に周知しているが、「他の客の安全のため、業者の判断で宿泊を拒めるようにするべき」との声が上がっていた。

 全国知事会も、デルタ株の流行を踏まえた人流抑制策として、旅館業法を含む法整備の検討を国に提言している。

 旅館業法第5条は、宿泊拒否について「伝染性の疾病にかかっていると明らかに認められるとき」などと規定。コロナの場合も検査で感染が明確だと拒否できるが、疑いの段階で拒むのは難しいとされる。

 法改正については、ハンセン病の元患者らから「感染者への差別につながる」との声も出ている。厚労省生活衛生課は「改正ありきではなく、慎重に検討したい」と説明。事業者や利用者らから幅広く意見を聴いて、議論を進めるとしている。

宿泊拒否事件の後に菊池恵楓園入所者自治会に送られてきたはがきの一部

◆法律介入「差別生む」 コロナ疑いで宿泊拒否 ハンセン病元患者ら法見直し懸念◆

 厚生労働省が2日に開いた有識者による検討会の第2回会合。日本旅館協会、日本ホテル協会、全日本ホテル連盟の宿泊3団体はヒアリングに対し、いずれも旅館業法第5条の改正などを求めた。

 県旅館ホテル生活衛生同業組合の西上佳孝理事長(54)も「利用者の安全が最優先だが、現状では濃厚接触者であっても宿泊を断れない。前向きに議論を進めてほしい」と見直しを歓迎。その上で、宿泊を拒まれた客が行き場を失うことがないような施策も求めた。

 一方、ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会の事務局長を務める竪山勲さん(72)=鹿児島県=は「コロナ感染者を悪者にしてはならない」と、法改正の動きをけん制。国の隔離政策の根拠となったらい予防法廃止の7年後に起きた宿泊拒否事件を例に、「法律が一度介入すれば、偏見や差別が生まれてしまうのがハンセン病問題の教訓」と訴える。

 南小国町のホテルが、元患者の宿泊を拒否した事件。当時は隔離政策を違憲とした国賠訴訟判決も確定していたが、ホテルとのやり取りを巡って、元患者の元には中傷の手紙や電話が殺到。社会に根強く残る差別意識を浮き彫りにした。

 竪山さんは「客に感染の疑いがあれば、合意の上で検査キットを使うこともできる。話し合いで対応できるのに、法律で縛れば取り返しがつかなくなる」と懸念。今後の検討会のヒアリングでは、断固反対を訴えるという。(臼杵大介)

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