(3)観光・商業従事者 川の恩恵「清流だからこそ」

熊本日日新聞 | 2020年11月14日 00:00

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岩や土砂が堆積したままの球磨川を指し、「満足してもらえる形で復活させたい」と話す「球磨川くだり」の中川知洋さん=10月26日、人吉市

 川下り、ラフティング、川沿いの温泉旅館…。人吉球磨の観光は、球磨川と支流の川辺川から恩恵を受けてきた。7月の熊本豪雨を機に川辺川ダムの建設計画が再浮上する中、観光や商業の従事者からは「清流でなければ観光客は来ない」との懸念も聞かれる。

 100年以上の歴史がある人吉市の観光シンボル、球磨川下り。運営する第三セクター「球磨川くだり」は豪雨で事務所や舟が流され、休業を余儀なくされている。「川の濁りが取れるのに2カ月ほどかかった。底が見えるくらい透明になったのは、ここ最近ですよ」。営業部長の中川知洋さん(54)が、川面を見つめた。

 川には、豪雨で運ばれた岩や土砂が堆積したまま。ダムができれば、球磨川と川辺川の環境が悪化するという専門家の指摘もある。中川さんの立場は「ダムに賛成とも反対とも言えない」。「伝統ある川下りを、ここで途絶えさせてはならない。どちらに決まってもやれることをやるしかない」と来春の運航再開を真っすぐ見据えている。

 球磨村の「ランドアース」は、人吉球磨のラフティングの草分け的存在。被災するまで、国外の観光客も受け入れていた。

 スタッフの鍛冶まゆみさん(51)は早期の営業再開を願う一方、川の氾濫が多くの犠牲を招いたことを重く受け止め、「自分たちだけ仕事ができればいいという問題ではない」と複雑な胸中を打ち明ける。ただ、球磨川を愛する気持ちは揺るがない。「日本でも有数の豊かで青く透明な川を守ってほしい」と訴える。

 川辺川ダムの建設計画は、地域の分断を生んだ。営業に支障が出るのを避け、立場を鮮明にできなかった観光従事者や商店主も多いという。

 そうした中、人吉温泉旅館組合長の堀尾謙次朗さん(63)は、蒲島郁夫知事らにダム反対を明言した。治水の在り方を巡る3日の意見聴取会。「アユの成育に影響を及ぼし、球磨焼酎のイメージが悪くなる恐れがある。ダムによる観光の成功例は全国的にほとんどない」と強調した。

 ダム中心の議論になることを警戒する声もあり、別の旅館経営者は「最優先にしてほしいのは復旧。以前のように、地域が二分されることでつらい思いはしたくない」と振り返る。

 人吉市中心部に店を構える自営業の男性も、「ダムに反対なわけではないが…」と前置きした上で、憤りを隠さなかった。

 「今は復興に向けて人吉球磨が一丸となるべきとき。そんな中、一体感が失われるダムに言及した蒲島知事の責任は重い。残りの任期で決着できるのか。よく考えてほしい」(澤本麻里子)

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