「多重防護」で人命を守る 流域の未来、住民が決めて 【参院議員・嘉田由紀子氏】

熊本日日新聞 | 2020年11月18日 00:00

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◇かだ・ゆきこ 埼玉県生まれ。京都大大学院、米国ウィスコンシン大大学院修了。農学博士。琵琶湖博物館(滋賀県)の総括学芸員、京都精華大教授(環境社会学)を経て、2006年から滋賀県知事を2期8年務めた。19年7月、参院議員(滋賀県選挙区)に無所属で当選し、1期目。70歳。

 -犠牲者宅を一軒一軒回り、被害に遭った時の状況を調べているのはなぜですか。

 「今回、想定を大きく超える被害が出た。地球温暖化が進み、こうした災害が日本中どこでも起きる可能性がある。今回の水害で一人一人がどのように亡くなったかを明らかにすることで、何が生死を分けたのかを検証している。尊い犠牲を教訓とし、水害による死者を一人も出さない社会づくりや治水政策の充実につなげたい」

 -滋賀県知事だった2014年、全国初の流域治水の推進条例を制定しました。

 「研究者として以前から琵琶湖と人のかかわりに注目してきた。流域の人たちは、水の恵みと災いの両面と共生していた。大雨が降ると堤防を見回り、危ない時は避難を促して命を守っていた」

 「ところが戦後の高度経済成長期に、コンクリートのダムや堤防を造り始めた。川を合理的に管理し、水を河川に閉じ込めようとした。行政はダムさえ造れば安全と宣伝し、住民も大丈夫と過信するようになった。しかし前例のない雨が降れば川はあふれる。知事として治水策を検討する時、昔の共同体としての治水対策の良さを生かそうと考えた」

 -具体的な条例の内容を教えてください。

 「河道掘削などで水を『流す』に加え、森林や水田で『ためる』、氾濫した水を制御する水害防備林整備などの『とどめる』、防災訓練や防災情報発信などの『備える』を総合的に実施する」

 「3メートル以上の浸水が予想される地域を浸水警戒区域に指定し、2階など縦方向に逃げるスペースがない場合、住宅の建築許可を出さない規制もかけた。地域の安全度マップも作った。ダムだけに頼らない『多重防護』の考え方だ。どのようなことがあっても人命が失われない治水対策を展開している」

 -国も7月、流域治水に転換する方針を示しました。

 「想定を超える水害被害が全国で相次ぎ、国も従来の治水策では対応できないことに気付いたのだろう」

 -蒲島郁夫知事は川辺川ダム計画復活を容認する方向で最終調整しています。

 「水害被害を受ける当事者は住民。治水策は住民が納得するものでなければならない。(国、県、市町村でつくる)流域治水協議会にも住民の参加が不可欠。ダムだけでは洪水は防げず、遊水地などダムによらない治水もやれることから進めていくことが必要だ」

 「球磨川流域では水害に遭いながら『川を愛している』という声が聞かれることに心を打たれる。流域の未来を住民が決めていくことが流域治水だ」=随時掲載

 参院議員の嘉田由紀子氏(無所属)は、7月豪雨で球磨川の氾濫により犠牲になった人たちの被災状況調査に取り組んでいる。滋賀県知事時代は、全国に先駆けて危険な土地の利用規制や避難体制の整備など、住民も参画する「流域治水」推進条例を制定した。水害から命を守る社会をどのようにつくっていくのかを聞いた。(聞き手・木村彰宏)

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