被災者とつながる生活支援 地域の福祉資源と連携を 【熊本学園大教授・高林秀明氏】

熊本日日新聞 | 2020年11月20日 00:00

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◇たかばやし・ひであき 静岡県浜松市出身。同志社大大学院文学研究科修士課程修了。兵庫県社会福祉協議会職員、県立広島女子大助教授を経て現職。阪神大震災では、仮設住宅の孤独死について調査。熊本地震では避難所運営や、みなし仮設入居者の支援に奔走した。熊本市在住、50歳。

 7月の豪雨災害で、多くの被災者が仮設住宅や被災した自宅、避難所などで不自由な生活を強いられている。災害発生当初から熊本県人吉市を拠点に被災者の生活支援を続ける熊本学園大社会福祉学部教授の高林秀明氏に、被災者の現状と、社会福祉や医療、コミュニティー形成など、求められる支援の在り方を聞いた。(聞き手・堀江利雅)

 -仮設住宅の整備が大詰めを迎えています。被災者の現状は。

 「人が集まる避難所や親戚宅から戸別の仮設に移って住環境は改善した。ただ、人間関係が希薄になる恐れがある。特に高齢の夫婦や独り暮らしのお年寄りなどは部屋にこもりがちになって、生活不活発症になりやすい」

 「在宅避難も含め認知症や足腰、高血圧などの持病が悪化したという声も聞く。自宅の再建や家計、仕事など現実と向き合い始める時期で心身のストレスは増える。熊本地震でも課題となった孤独死なども懸念される」

 -必要な支援は。

 「まずは仮設の住民同士や、地区の自治会、校区社会福祉協議会のメンバー、民生委員らが顔見知りになることで安心できる。さらに仮設団地に自治組織ができれば、役員が行政や社協との橋渡しになる。課題は、入居者全体の世帯構成や出身地域などの情報が市町村から入居者に伝えられていないこと。自治組織結成のネックになる場合もある」

 「市町村の社協が被災者を対象に運営を担う『地域支え合いセンター』は、見守りや住民交流の要。日頃から社協が担っている地域包括支援センターなど、平時の地域の福祉資源と連携することが望ましい」

 -ボランティアや民間支援団体にできることは何ですか。

 「被災直後から学生と一緒に被災者宅の泥かきや野菜スープの提供などの支援活動をしてきた。その活動を通して、地域との関係が希薄な人などを把握して巡回したり、社協などと情報を共有したりしてきた。仮設団地では、学生中心の交流カフェを開いている」

 「今回、コロナ禍で県外の支援団体の活動が制限された一方で、地域の力が発揮されたと思う。被災地域内の福祉団体やまちづくり団体、企業、学校など多様な主体が活躍した。それらの人々が被災者とつながり続け、地域交流や傾聴などにつなげてほしい」

 -行政の役割も重要です。

 「自助、共助、公助の線引きでなく、その間をつなぐ意識が必要。仮設団地内の自治組織や地域団体などと、社協や行政が連携する枠組みを行政が描ければ、復旧復興で多忙な行政の負担も減らせ、効率的な支援ができるのではないか」

 「被災者支援制度の運用にも柔軟さが求められる。今回の豪雨では、地域の再興や自宅再建の方針が、球磨川の今後の治水策に左右されて先が見通せないケースもあるだろう。原則2年の仮設の入居期限や公費解体の申請締め切り、医療費免除期間などについて被災者の実情に合わせた対応が求められる」

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