阿蘇の草原5153ヘクタール追加へ 国の重要文化的景観

熊本日日新聞 | 2020年11月21日 09:59

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国の重要文化的景観への追加指定が有力となった北外輪山の牧野=14日、阿蘇市

 国の文化審議会は20日、既に重要文化的景観に指定された熊本県阿蘇市の阿蘇北外輪山の草原の範囲を拡大するよう萩生田光一文部科学相に答申した。本年度中に答申通り認められる見通し。

 阿蘇地域は2017年10月、牛馬の放牧による草原維持や野焼きにより貴重な植物が育まれている点などが評価され、草原や森林など7件(総面積4081・8ヘクタール)が重要文化的景観に指定。そのうちの1件で、既に指定を受けた大観峰周辺の612・6ヘクタールに今回、阿蘇市の山田西部牧野から車帰牧野までの草原計5153・4ヘクタールが追加される。

 阿蘇地域7市町村や県は、7件を一体と捉えた「阿蘇の文化的景観」を構成資産として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産の国内候補「暫定リスト」入りを目指している。リスト入りは国や自治体による資産の法的な保護措置が前提で、7件はいずれも文化財保護法が適用される。

 各市町村は17年の指定後、対象範囲の拡大に向けて牧野組合など土地の管理者に働き掛け。放牧などの生業に支障はなく、景観保全に関わる事業の優遇措置を受けられる利点などの説明を重ね、追加申請の承諾を得た。

 阿蘇市の佐藤義興市長は「牧野組合の協力が強まり、ありがたい。地域一体で暫定リスト入りを果たしたい」と意気込んだ。蒲島郁夫知事は「引き続き7市町村と連携し、熊本の宝が世界の宝となるよう、世界遺産登録に向けて全力で取り組む」とコメントした。(東誉晃)