ジビエ生産、地域の活力に 多良木町槻木 狩猟から出荷まで住民奮闘

熊本日日新聞 | 2021年08月12日 10:38

 高齢化率が84%を超す熊本県多良木町槻木[つきぎ]で、駆除したシカやイノシシのジビエ(野生鳥獣肉)の加工品生産が本格化している。狩猟から解体処理、袋詰め、出荷まで一貫して住民たちが手掛け、雇用も創出。「人と自然が共存できる里山」を目指し、過疎地の活性化に挑んでいる。

シカ肉を加工した「つきぎジビエ」のサラミ風ソーセージ(手前)とシカのモモ肉(奥)=多良木町

 槻木には現在、63世帯の約100人が暮らす。宮崎県境近くの山あいで、農作物の害獣被害は後を絶たず、駆除は欠かせない。農林業を営む落合龍見さん(62)は槻木に5人いる猟師の1人。「数年前まではシカだけで年300頭ほど捕獲していたが、ほとんど廃棄していた」と話す。

 それを食用として活用し、地域の潜在能力を引き出そうと、落合さんは2019年8月、住民の約5分の1に当たる20人で「つきぎ資源活用協議会~みらい~」を設立した。自ら会長となり、国の農山漁村振興交付金を活用。御大師地区の元商店を借り、ジビエ解体所として整備した。

 捕獲したシカとイノシシを搬入し、20年度は28頭を解体。本年度は4カ月で既に20頭に達した。施設長の中村正廣さん(60)=人吉市=は、東京の食肉加工会社などで40年間、精肉加工に携わってきた職人とあって手際良くさばいている。

 自然の中で育つ野生動物は1頭ごとに体の状態が異なり、処理には神経を使うという。「心臓は必ず開いて健康状態をチェックし、内臓が傷んでいたら病気を疑い、1頭丸ごと廃棄する」と中村さん。肉に銃弾などが残らないよう必ず金属探知機にかけている。

捕獲されたシカを解体所で手際良く処理する施設長の中村正廣さん

 シカの精肉での出荷は約1割にとどまる。残りの肉は錦町のハム工房に持ち込み、指導を受けながらソーセージに加工。「つきぎジビエ」のブランド名で、地元の松本商店やイスミの3店舗で販売している。このため中村さんは来春、槻木の実家に工房を造り、ソーセージやハムの生産を始める予定だ。

 協議会発足から2年。コロナ禍で外食産業への販路拡大は厳しい状況が続く。昨年7月の豪雨では、町中心部につながる唯一の県道が寸断され、約8カ月間も半孤立状態になった。

 そうした中、現在30~80代の会員18人はジビエを使った試作品やレシピ作りを重ね、各種研修会にも参加。「製造加工」「営業販売」など4班で業務を分担し、80歳以上の女性2人も商品のラベル張りに奮闘している。

 3年間の国の交付金は本年度が最終年度。落合会長は「しっかり自立することが第一。新製品の開発や、町のふるさと納税の返礼品になることも視野に入れ、収益を上げられるよう事業展開していきたい」と力を込めた。(坂本明彦)

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