国営大蘇ダム、再び漏水 熊本県産山村 1日1万5千トン

熊本日日新聞 | 2020年11月26日 11:00

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供用開始後に国の想定を超える漏水が発生している大蘇ダム=25日、産山村

 大規模な水漏れで農林水産省が対策工事を実施し、2020年4月に供用開始した国営大蘇ダム(熊本県産山村)で、地中への水の浸透量が国の想定を大きく上回っていることが25日、九州農政局への取材で分かった。11月現在の浸透量は1日当たり約1万5千トンで、想定の2千トンの7倍超となっている。

 同局は「当面は農業利水への影響はないが、稲作に多くの水を使う春まで今の状況が続き渇水が重なれば、水不足になる恐れがある」と説明している。原因については「調査中」としており、詳細はダムの水位が下がる来春以降にしか調べられないという。

 大蘇ダムは08年、ダム本体完成後の試験湛水[たんすい]で満水時に4万トン、最低水位で5千トンの浸透量があり、利水の計画量が確保できないことが判明。農林水産省と受益農家が多い大分県側が13年から7年間で計126億円を投じ、ダム湖の約3分の2をコンクリートなどで覆う対策工事を実施した。その際、「10年に一度の渇水に対応できる」として浸透量の目安を2千トンとしていた。

 19年度の試験湛水では、水がたまり始めた6、7月ごろは3万トン近く浸透していたが、満水になった9月に2千トン程度に落ち着いた。このため同局は「6、7月は渇いた山肌で水が染み込みやすかった」とみて、漏水対策工事の効果を確認していた。

 供用を開始した20年度は7月の豪雨で満水となり、8月に最大3万トン超の浸透を確認。その後の浸透量の減少幅が少なく、貯水率が約50%となった11月下旬でも依然、1万5千トンの浸透が続いている。

 国は「ダムが完成している状況に変わりない」として25日、大分県竹田市で完工式を開催したが、熊本県側の受益地の阿蘇市と産山村の首長や議員らは「国の説明が不十分」として式典を欠席した。

 同局は「地元への説明が遅れ、不信感を抱かれてしまった。今後は丁寧な説明に努める」としている。(内田裕之)