がん闘病中のタレント、被災した古里・芦北町を支援 

熊本日日新聞 | 2020年10月3日 16:00

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「多発性骨髄腫」との闘病を公表した芦北町出身のタレント、えみりィーさん。「支えてくれた人や古里に笑顔と元気を届けたい」と前を向く=2日、熊本市中央区の熊日本社(小野宏明)

 熊本県芦北町出身のタレント、えみりィーさん(40)=合志市=が血液がんの一種「多発性骨髄腫」との闘病を公表、自身のブログや番組で心境を発信している。完治が難しい病を受け入れ、育児と仕事を両立させながら7月豪雨で被災した古里にも足を運ぶ。「自分らしく悔いのない毎日を送り、たくさんの人に笑顔と元気を届けたい」と語る。

 えみりィーさんは明るく元気なキャラクターで熊本や福岡のテレビ、ラジオに複数のレギュラー番組を持ち、芦北町の親善大使としても活躍してきた。夫(43)との間に14歳と6歳、4歳の2男1女がいる。

 異変を感じたのは昨年3月。朝起きると左脇下がズキッと痛んだ。整形外科を受診すると、ろっ骨が折れていた。別の日は洗濯の途中に激痛が走り、右側のろっ骨にひびが入っていた。

 5月に熊本赤十字病院の血液・腫瘍内科で多発性骨髄腫の診断を受けた。子ども3人のことが頭をよぎり、夫とともに泣き崩れた。「泣いてばかりいたが、この子たちには私が必要だし、私も成長を見届けたいと気持ちを切り替えた」

 同病院によると、多発性骨髄腫は血液細胞の一つで細菌やウイルスへの抗体をつくる「形質細胞」のがん。正常な造血が妨げられ、骨折や腎障害などの症状が出る。国内では年間10万人に5人の割合で発症するが、多くは高齢者で40歳未満はまれ。新薬開発が進むが、現時点で完治は難しいとされる。

 えみりィーさんは1月、3度目の入院で大量の抗がん剤を投与して全身のがんをできる限り死滅させた後、自身の造血幹細胞を戻して骨髄機能を正常にする治療を受けた。約1カ月無菌室で過ごし家族にも会えない。抗がん剤の副作用で毛髪はほぼ抜け落ちた。

 その後「寛解状態」の診断を受け、テレビやラジオの仕事を再開。そんな中、芦北町を豪雨が襲った。

 実家に被害はなかったが、多くの友人や知人が被災。成人式の振り袖姿を撮った写真館も自分の背丈以上の泥水に漬かった。「自分の人生や仕事に関わりのあった場所が傷付き、自分にできることはないかと思った」

 豪雨直後は毎週のように現地に入り、集落を一軒一軒回って必要な物資を届けた。今も片付けの手伝いや炊き出しなどを続けている。

 病気を公表したのは「がんであっても頑張る姿を伝えられるのではないか」との思いから。「家族やたくさんの人に支えられて今の自分がある。完治の可能性を信じ、元気で明るい姿を見せていくのが自分なりの恩返しだと思う」(川崎浩平)