女性歌劇団員、地域おこしへ 11月移住、高森町パート職員に 情報発信にも一役

熊本日日新聞 | 2020年10月24日 16:00

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コアミックスの関係者らと一緒に写真に納まる女性歌劇団「096k」のメンバー。11月に高森町に移住する=9月15日、熊本市

 熊本県高森町にもうすぐ、10代後半から30代前半の若者22人が移住する。11月に漫画出版社コアミックス(東京)が、町内に開校する「漫画アカデミー」の女性歌劇団「096k(オクロック)の団員たちだ。町は団員たちの情報発信力を見込んで、パートタイム職員として任用する。

 アカデミーは、漫画やアニメなどのクリエーターやパフォーマーを志す国内外の若い人材を育成し、デビューさせる拠点。現役の編集者や漫画家が指導に当たる。同社によると当初は、096kと同時に海外の若手漫画家の入学も計画していたが、新型コロナウイルスの影響で延期となった。

 096kは、同社がオーディションで全国から選抜。元陸上自衛官やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のショー出演経験者など、個性あふれる18歳~32歳の俳優の卵たち。来年3月には、時代劇漫画を舞台化した「前田慶次 かぶき旅」の旗揚げ公演を熊本市で予定している。

 町は、芸能活動を展開することになる22人に、町の情報発信に一役買ってもらおうと期待する。アカデミーを核としたエンターテインメントの動きを、地域おこしや知名度向上に結び付けたい考えだ。

 同社と2019年に結んだまちづくりに関する連携協定に基づき、11月から22人を本年度新設した「パートタイム会計年度任用職員」として採用。同制度では副業が禁止されないため、歌劇団の活動と“二足のわらじ”が可能となる。週30時間以内の勤務で、舞台の定期公演や動画配信サイトで町の広報活動などを委嘱するほか、福祉施設や学校行事と連携した地域おこしにも取り組んでもらう。

 同社は、2階建ての旧高森温泉館を大幅に改修中。1階の大浴場だった場所は、ダンスのレッスン室に改装。2階には漫画制作スタジオなどを設ける。新型コロナの影響で工事が少し遅れているものの、096kのけいこ場や、約1万5千平方メートルの敷地内に新設中のアカデミー生徒が暮らす住居施設は完成間近。コンクリートの地面も大部分を芝生に置き換え、景観も整える予定という。

 同社の橋本俊太郎主任(36)は「アカデミーのスタートは思惑通りではなかったが、コロナ収束までの間、国内外のクリエーターが思いっきり創作活動に取り組める環境を整える時間と捉えている。そのためにも096kには頑張ってほしい」。町との間では、アカデミー内に町立の日本語学校開設も検討中という。

 草村大成町長は「096kの発信力が、町に新たな若い人材を呼び込む好循環を生んでくれると期待している。漫画から派生する映画やゲームなど新産業が町を軸に展開し、過疎地域でも時代の最先端をいくビジネスチャンスが、地方創生につながることを示したい」と語った。

 096kは11月初めにも入寮する予定。(上杉勇太)