出勤7割削減「現実離れ」 熊本県内企業のコロナ対策 テレワークできない業務多く

熊本日日新聞 | 2021年05月23日 15:58

サテライトオフィスでテレワークする肥後銀行の行員=20日、熊本市中央区

 新型コロナウイルス対策で熊本県内に「まん延防止等重点措置」が適用されたのを受け、県は政府の方針に基づき、民間に「出勤者数の7割削減」への協力を呼び掛けている。事業者はテレワーク体制の拡充を図るが、在宅ではできない業務もあり、目標達成は難しいのが現状だ。

 熊本市中央区水前寺にある肥後銀行の福利厚生施設。20日、所属や業務の異なる行員7人が業務用パソコンでテレワークをしていた。融資の稟議[りんぎ]書を電子決済していた与信統括部の男性副部長(49)は「自宅と違い適度な緊張感で仕事ができる」と言う。

 同行はテレワークの実施率2割を目標に掲げる。「自宅は狭くてやりづらい」との要望から、4月下旬に福利厚生施設にサテライトオフィスを設置。5月17日からは県内10支店の会議室も利用できるようにした。

 熊本銀行も、持ち運び可能なパソコンなどの機器を確保し、行員にテレワークを呼び掛ける。本部の150人の実施率は約2割で、4月末の社内調査では85%が「テレワークを続けたい」と好意的だった。生産性も「上がった」「問題ない」という声が多かった。

 ただ、肥後銀、熊本銀とも窓口業務などテレワークにできない仕事もあり、7割削減は困難という。

 平田機工は社内会議のほとんどをオンラインに切り替えたが、「製造現場でのテレワーク実施は難しい」。電気通信工事のSYSKENは、コロナ収束後も見据えて在宅勤務を3月に制度化したばかりだ。情報通信サービスのKISの現在の実施率は4~5割に増えたが、7割削減は目標にしていない。地場企業の担当者からは「7割という数字は現実離れしている」との声が漏れる。

 都道府県ごとの状況を調べるパーソル総合研究所(東京)によると、昨年11月の県内就業者の実施率は14・2%にとどまり、全国平均24・7%を下回る。

 同研究所は「地方では、社員の職務が明確でテレワークしやすい大企業や、情報通信関連の企業が少ない」と分析。その上で、「行政は、業界団体に商慣習見直しなどテレワークの環境整備を促すべきだ。企業側も経営者が方針を明示し、出社を輪番制にするといった努力が求められる」と指摘する。(中原功一朗、田上一平)

 ●県と熊本市、半減にも届かず

 新型コロナ対策を推進する県と熊本市も、「出勤者数の7割削減」を庁内の各部署に通知した。それぞれ数千人規模の職員を抱える大きな職場だが、これまでの取り組みでは半減にも届かず、「率先垂範」は道半ばだ。

 熊本市は4月20日、職員向けのサテライトオフィスを区役所やまちづくりセンターなどの市有施設12カ所に開設した。テレワークに使っていた男性職員は「子どもがいる自宅では仕事に集中できない。静かで落ち着きます」と歓迎した。

 ただ、運用開始から約1カ月(19日時点)の利用実績は延べ52人。単純計算で1日平均1・7人にとどまり、まだ浸透しているとは言い難い。

 県は独自の緊急事態宣言を出した1月中旬~2月中旬に「出勤者数の5割削減」を掲げたが、実績は4割どまり。市も同期間、窓口業務などを除く約1100人に「在宅勤務5割」を求めたが、年度末の業務増もあり実施率は35・6%だった。

 今回の「出勤者数の7割削減」は、政府が基本的対処方針で民間事業者に求めた目標値。行政機関は該当しないが「民間に求める以上、行政が何もしないわけにはいかない。全力で取り組む」と県人事課。とはいえ、数値目標の達成に「はっきりした見通しはない」のが実情だ。

 一方、コロナ禍も1年余りが経過し、県、熊本市ともパソコンのネットワーク環境などが整ってきた。市人事課は「計画的な年休取得や働き方の工夫で目標達成に取り組む」と実績アップを目指す。(久保田尚之、高宗亮輔)

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