「内密出産」緊急避難の場に 妊婦に寄り添う支援必要 「ゆりかご」開設14年 慈恵病院・蓮田健院長に聞く

熊本日日新聞 | 2021年5月10日 10:21

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 親が育てられない子どもを匿名でも預かる「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」が、10日で開設から14年を迎えた。運営する慈恵病院(熊本市西区)は、匿名での出産を強く希望する妊婦を受け入れる独自の「内密出産制度」を導入。ゆりかごの外でも、命を救う取り組みを進める。蓮田健院長は「内密出産の“看板”があるからこそ、危機的状況にある妊婦とつながることができる」と訴える。  ゆりかごには2019年度までに、155人の子どもが預けられた。そのうち、医療関係者が立ち会わないまま自宅や車中で産む「孤立出産」は81人で半数以上を占める。大半は県外からの来院で、母子ともに命の危険にさらされていると指摘されてきた。  それを受け、慈恵病院は19年12月、内密出産制度の運用開始を表明。病院が母親の情報を保管し、子どもが一定の年齢に達すれば母親の実名など閲覧できるようにした。また、20年6月には孤立出産を防ぐ目的で、困窮状態にある妊婦を出産まで一時的に受け入れる保護室「エンゼルルーム」を整備した。  内密出産の事例はまだないが、これまで数人が「匿名で出産したい」と遠方から訪れたという。蓮田院長は「出産を周囲に知られたくないと話す妊婦は、複雑な家庭環境や虐待を受けて育ったケースもある。そんな妊婦には、緊急避難が必要」と強調する。  「保護室を作り、時間をかけて妊婦と信頼関係を築けるようになった。共感を持って寄り添ううちに、名前や困っている状況を打ち明けてくれることもあった。行政の支援機関は妊婦が匿名ではサポートしないし、『母親だからしっかり育てて』と正論を言ってしまうだろう。妊婦を非難せず、寄り添う支援は民間でなければ無理だ」  しかし、母親の匿名性と、子どもの「出自を知る権利」を両立する必要がある内密出産制度は、日本では法制化されていない。熊本市は20年12月、「法令に抵触する恐れがある」として、慈恵病院に実施を控えるように求めたが、応じるつもりはないという。  ゆりかごの設置からこれまで、慈恵病院の取り組みを貫くのは、蓮田太二前理事長(20年10月に死去)から受け継いだ「赤ちゃんの遺棄、殺人を無くす」という思いだ。マンパワーや時間、運営経費もかかるが、困窮する母子には長期的サポートが必要と話す。  「望まない妊娠をした女性に対して、社会にもっとセーフティーネットを広げたい」と蓮田院長。「道のりは長いが、慈恵病院がモデルケースをつくりたい」と力を込める。(清島理紗)...

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