75歳以上医療費 踏み込み不足の制度改革

12月13日 09:31

 75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割へ引き上げる制度改革は、対象者の線引きを年金年収200万円以上とすることで決着した。全高齢者の23%、約370万人が引き上げの対象となる。施行の時期は、「2022年度初めまでに」としていた当初方針から、22年10月以降に先送りされる。

 制度改革の目的は、団塊世代が75歳以上になり始め医療費が急増する22年までに、現役世代の負担を和らげる仕組みを整えることだったはずだ。だが、時間をかけて示された結論は、自民、公明両党の妥協の産物としか言いようのないものだった。来年実施される衆院選や東京都議選、22年夏の参院選への影響をできる限り軽減したい両党の思惑に沿った決定で、踏み込み不足と言わざるを得ない。

 1800万人超の75歳以上が支払う医療費窓口負担は、現役並み所得の人(単身で年収約383万円以上)が3割で、それ以外は原則1割となっている。一方、窓口負担を除く医療給付費は総額で約16・6兆円。そのうちの5割は公費、4割は現役世代の保険料からの支援金で賄われている。高齢者にも応分の負担を求める仕組みに改めなければ、将来の現役世代が耐え難い重荷を背負うことは明らかだ。

 今回の制度改革を巡る検討で、厚生労働省は2割負担を求める対象の線引き基準として「240万円以上」から「155万円以上」までの5案を提示した。菅義偉首相は対象者が2番目に多くなる170万円以上を支持。これに対し、公明党は対象者が最も少なくなる240万円以上を支持した。交渉は迷走したが、結局、厚労省が提示した5案のうち真ん中にあたる200万円以上とすることで決着した。

 収入170万円以上は、本人に課税対象となる所得がある水準だ。240万円以上は、介護保険の2割負担対象と同水準で、いずれもそれなりの説得力がある線引きだった。しかし、200万円以上は線引きの基準とする根拠に乏しく、財政健全化を求める財務省が描く改革像にも合致しない。

 厚労省の試算では、現役世代が現在負担している支援金6・8兆円は、何の改革もしなければ22年度には前年度比2500億円増の7・2兆円に膨れ上がる。収入200万円以上を2割負担にすると880億円抑制できるが、それでも年間増加額の3分の1程度にすぎない。

 政府は2割負担導入の方針を昨年末に固め、今年6月に対象を決定する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大で延期。この間に景気、雇用が悪化し高齢者の負担増に慎重論が強まった。

 確かに、年金を主な収入とする高齢者に負担増を求めれば、医療機関の受診をためらう人も増えかねない。とはいえ、コロナ禍で仕事や給料が減った現役世代も生活は苦しい。そうした状況も踏まえて将来に憂いを残さない改革を急ぎ、国民に説明を尽くすのが政府与党のあるべき姿ではないのか。

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