米大統領施政方針 信頼回復へ指導力発揮を

05月02日 13:39

 バイデン米大統領が初の施政方針演説で訴えたのは「民主主義への信頼回復」だった。民主主義の優位性に疑念を投げ掛ける中国を強く意識。「専制主義者が未来を勝ち取ることはない。勝つのはわれわれ米国だ」と国家の再生をアピールした。

 トランプ前政権下で社会の分断が深まり、大統領選の結果を巡って暴動が起きるなど、米国の民主主義は大きく揺らいでいる。国際社会からの信頼回復の成否は、バイデン氏が指導力を発揮できるかどうかにかかっている。「今こそ団結しよう」との呼び掛けは米国民に届くのか。世界が注視している。

 施政方針演説でバイデン氏は、4年間の任期中に取り組む内政・外交政策を明示した。柱は、新型コロナウイルス禍に対応した雇用の創出と格差の是正である。

 経済対策1兆9千億ドルに続き、インフラ投資や教育、育児支援など4兆ドル(約430兆円)を新たに投じると宣言。財源は法人税や富裕層の増税で賄い、中間層の底上げで経済成長を図る考えを示した。1980年代のレーガン政権(共和党)で始まった新自由主義型の「小さい政府」から、巨額の財政出動による「大きな政府」への転換と言える。

 この40年間、“機会の平等”を前提にした米社会の行きすぎた能力主義はエリート層と労働者階級の格差を広げ、勝者に傲慢[ごうまん]を、敗者に屈辱をもたらした。2016年の大統領選でのトランプ氏の勝利も、背景にはエリートを体現する民主党候補に対する「忘れられた」労働者の怒りがあったとされる。

 バイデン政権は助走期間とされる100日間を過ぎた。この間、コロナ対策で2億回超のワクチン接種を達成し、米国内には明るいムードが戻ってきた。国民全体の支持率は50%を超えている。

 だが、楽観はできない。与野党の勢力は伯仲しており、野党共和党の支持者は「大きな政府」に批判的だ。

 今後は与野党の容赦ない戦いに突入する。国民間の党派対立はなお根深く、トランプ氏の影響力も残る。分断を融和へと導き、結束して政策を前進できるのか。真価が問われるのはこれからだ。

 気掛かりは中国への強硬な姿勢だ。演説では習近平国家主席を「専制主義者」と名指しで批判。対立は望まないとしつつも、「あらゆる分野で米国の国益を守る」「インド太平洋で強固な軍事力を維持する」と習氏に伝えたと明かした。同盟・友好国や国際協調を重視し、人権問題でも関与を強めるバイデン政権で、「新冷戦」とも呼ばれる米中対立は、さらに激しさを増しそうだ。

 日本は安保で米国に、経済では中国に依存する。板挟みとも言えるが、気候問題をはじめ両国が協力できる分野を広げ、対話の窓口を維持する役割を担いたい。両国から信頼を得ることは、日本だけでなく、東アジアの平和と安定につながる。

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