4月29日付

04月29日 09:16

 コロナ禍とは何の関係もないが、最近読みふけっていたガルシア・マルケスの『コレラの時代の愛』にこんなくだりがあった。<この世界で愛ほど難しいものはなかった>。南米を舞台に男と女の愛と老いを、人生のうんざりするほど長いスケールで描いた小説だ▼77歳という老いの中で、この人はどんな愛を求めていたのか。「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助さんである。世間の耳目を集めた死亡から3年。当時同居していた25歳の元妻が警察に逮捕された▼何億円という財産を持つ資産家と、驚くほど年の離れた女性の結婚。そのわずか3カ月後の不審死とあって、事件はさまざまな臆測を呼んだ。容疑通りなら、野崎さんは致死量の覚醒剤を飲まされ殺されたことになる。元妻は事前に覚醒剤を入手していたという。警察は3年がかりでどれほどの証拠を集めたのだろう▼ドン・ファンは伝説上の“女たらし”。野崎さんは自著にその名を冠し、「美女4000人に30億円を貢いだ男」と自称していた▼中学を卒業後、鉄くず拾いや金融業で財を成した。「美人と付き合いたい」という一心で金持ちを目指したという。その人生は奔放に見えて、愛に飢えた孤独な男だったのかもしれない▼殺害が真実なら、野崎さんは女性を追い求めて、女性に死したということになりはしないか。元妻へのプロポーズの言葉は「ボクの最後の女性になってくれませんか」だったという。容疑者の動機が最初から愛ではなく打算だったとしたら皮肉な結果である。

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