熊本城天守閣復旧 ​国重文の修復にも総力を

04月26日 09:27

復旧工事が完了した熊本城天守閣(右が大天守、左が小天守)=熊本市中央区

 5年前の熊本地震で大きな被害を受けた熊本城で、天守閣の復旧工事が完了した。

 天守閣は地震で瓦が崩れ落ちるなどしたが、熊本市が「復興のシンボル」として最優先に復旧した結果、屋根の黒と白壁のコントラストが見事な雄姿がいち早くよみがえった。26日から予定していた一般公開は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため延期されたが、いまだ被災からの復興途上にある県民にとっても大きな励みとなろう。

 ただ、1607年の築城当時から残る櫓[やぐら]など城内に13棟ある国重要文化財の復旧は、先行して工事を終えた長塀以外はこれからだ。国特別史跡である熊本城の文化財的価値を担保するには、これらの復旧が欠かせない。市が目標とする2037年度までに全てを被災前の状態に確実に戻し、その価値を守ることが肝要である。本格復旧という意味では、長い道のりが始まったばかりであることを忘れてはならない。

保全と耐震の両立

 天守閣には大天守(地上6階、地下1階)と小天守(地上4階、地下1階)がある。1877年の西南戦争開戦直前に火災で焼失し、1960年に鉄筋コンクリートで再建された。

 今回の工事では、建物を軽量化した上で最新の耐震・制震装置を整備。バリアフリー化の一環として車いす利用者らが使用できるエレベーターも設置した。加藤・細川家の時代から地震被災まで、城の歴史に関するパネルや映像を新設するなど内部展示も一新した。

 国重文12棟については解体復旧する方針が固まったばかりだ。21年度は一部の建物の解体設計に着手し、できる限り部材の再利用を進める。文化財としての価値保全と、今後の地震に備えた耐震対策を両立する難題だけに、緻密な対応が必要となる。高度な専門知識や伝統技法を持つ人材育成にも努めなければならない。

 建物が破損し、石垣が大きく膨らんだ宇土櫓も全て解体した上で復旧する。築城当時から残る建物で、城内文化財の中で最も価値が高いとされている。解体を進めながら調査を実施し、よりよい復旧方法を見極めてもらいたい。

「熊本モデル」発信

 全体の約3割が被害を受けた石垣の復旧も、慎重に取り組む必要がある。文化庁は熊本城の石垣の構造などから崩落の要因を分析し、その知見を生かして、城郭や石垣がある全国の国指定史跡の耐震診断指針を策定する方針だ。文化財の耐震化指針は重要文化財の建造物向けしかなく、「熊本モデル」が発信できれば、大地震が発生した場合の史跡の被害想定や対処方針を決める上で大きな助けとなる。膨大な調査や技術的検討が必要となろうが、全国の文化財保全につながることを期待したい。

拙速を戒めながら

 熊本城を巡っては、史跡保護に負の影響を与えかねない活用を改めるよう、文化庁が熊本市を文書で指導したことがある。地震があった年には、市が復興行事の会場として二の丸広場に仮設舞台を長期間設置し、批判も浴びた。

 文化財保護法は地震後、文化財を観光や地域振興に活用しやすくできるよう改正された。昨年には国の文化審議会が、国史跡などで歴史的建造物を復元する際に本来の意匠や構造が分からなくても文化庁の許可を得やすくする新基準を決めた。とはいえ、法と制度を適正に運用してこそ文化財の保護が実現することを忘れてはならない。

 文化財の復旧はできる限り急ぎたいが、拙速を戒めなければならない面もある。熊本城の復旧も、将来にわたって価値を伝えていくための取り組みとしたい。天守閣の復旧完了は、あくまでも通過点である。

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