米軍アフガン撤退 「銃をくわに」の支援こそ

04月19日 09:31

 米国のバイデン大統領が、アフガニスタン駐留米軍を、2001年の米中枢同時テロから20年となる今年9月11日までに完全撤退させると発表した。

 バイデン氏は「アフガンを再び米本土攻撃の拠点にさせないとの目的は達成された」と強調したが、現地では反政府武装勢力タリバンが再び台頭し、アフガン政府との衝突が続いている。アフガン国内の安定化という最大の目的は達成できないまま、米国の軍事介入政策の限界を露呈しての撤退と言えるのではないか。

 戦端を開いた側の米国が、安定化への道筋もつけずに手を引けば、身勝手のそしりは免れまい。撤退前に米政府は、アフガン政府とタリバンとの和平合意実現の責務を果たすべきだ。そして真の安定化のためには、銃をくわに持ち替えさせる民生支援こそが必要なことを改めて強調しておきたい。

背景に中国シフト

 01年当時のタリバン政権は米軍などの攻撃を受け崩壊。幹部らはパキスタン国境周辺に逃れたが、現在は勢力を盛り返し、国土の約半分を掌握しているとされる。

 米国内では泥沼化する戦闘に厭戦[えんせん]気分が高まっており、それを受けてトランプ前政権が、18年10月からタリバンとの協議を開始し20年2月に和平に合意。今年4月末までの米軍撤退を約束していた。

 バイデン政権が、撤退時期は遅らせたものの前政権の路線を引き継いだ背景には、前述した厭戦世論とともに、対立が激化している中国をけん制するため、軍事力をシフトさせたいとの思惑がある。

 だが、トランプ政権とタリバンとの和平合意は、アフガン政府の頭越しで決めたものだ。アフガンのガニ大統領は今回の表明について、「米国の決定を尊重する」と理解を示しているものの、アフガン政府とタリバンとの恒久停戦協議は進んでおらず、撤退が衝突激化につながる懸念は拭えない。

一層の国際連携を

 24日からは、トルコのイスタンブールでアフガン和平に関する国際会議が開かれる予定だ。タリバンは当初の撤退期限が延期されたことに反発し、ボイコットの構えを見せているが、何としてもアフガン政府との対話のテーブルに着かせる必要がある。

 停戦合意のほかにも、選挙実施に否定的なタリバンをどのような形で政治参加させるかなど、和平プロセスの課題は数多い。軌道に乗せるためには、米国の関与はもちろん、3月のモスクワでの和平会議に参加したロシア、中国、パキスタンなどによる、一層の国際連携の後押しが不可欠だろう。

中村哲さんの危惧

 米国の軍事介入政策が失敗に終わるだろうことを、当初から予見していた人がいる。アフガンで支援活動を長年続け一昨年、銃弾に倒れた非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師、中村哲さんだ。

 中村さんは、アフガンの戦乱の根本には貧困問題があることを指摘。米国がその解決には取り組まずに、タリバン掃討を優先させ地方の軍閥への武器援助などを行うことで、中央政府の統制がかえって効かなくなり、治安悪化が進むことを危惧していた。

 食べるために銃を持たざるを得ないアフガンの社会構造自体を変えなければならない。干ばつで苦しむ国民に、用水路建設によって農地という自活手段を提供する。中村さんたちが続けてきた地道な民生支援は、今回の駐留米軍撤退決定で、さらに重みを増すことになるだろう。

 1989年の旧ソ連軍撤退後にアフガンで内戦状態が続き、アルカイダなどのテロ組織の拠点となった背景には、国際社会が同国の貧困に手を差し伸べることなく放置してきたことがある。その歴史の愚を繰り返してはならない。

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