暮らし再建 それぞれの歩み支えよう

04月14日 09:13

 2016年4月の熊本地震で被災した西原村。農地や木々の緑を眺めながら車を走らせると、真新しいコンクリートの擁壁が間近に迫る。宅地を取り囲むようにそびえ、段々畑のように連なるところも。甚大な被害を受けた6地区の集落が、頑丈に生まれ変わった姿だ。

 新築の家で生活を始めた人がいる。自宅の完成を待つ人もいる。一方で、「あの日」の恐怖や経済的な不安など、さまざまな事情で再建に踏み出せない人も少なくない。西原村に限ったことではないだろう。個々の復興の歩みは一様ではない。被災地に点在する更地がそのことを物語る。

 前震からきょうで5年。深い傷を負った古里ではインフラの復旧が着実に進み、地震前の姿を取り戻しつつある。ただ暮らし再建が道半ばの被災者の中には「取り残される」と焦燥感に駆られる人がいることだろう。誰一人として社会的に孤立することのないよう官民が連携し伴走を続けたい。

 熊本日日新聞社が地震の節目に合わせて毎年実施している県内被災者の聞き取り調査では、復興を「実感する」と答えた人が「ある程度」も含め約8割に上り、前年よりも増えた。被災地ではこの1年間に、地震で寸断された国道57号の北側復旧道路やJR豊肥線、新阿蘇大橋などが復旧し、熊本城天守閣もその雄姿を取り戻した。復興の象徴が次々に完成し、希望を抱いた人は多いだろう。

 気掛かりなのは、復興を「実感できない」と答えた約1割の人たち。今なお応急仮設住宅で暮らす人たちも含まれるだろう。大半は土地区画整理など公共事業の影響を受けている益城町の被災者だ。計画では事業完了まであと7年かかる見通しで、「復興は夢のまた夢」と嘆く声もある。

目立つ経済的不安

 自宅再建を果たしても、二重ローンなど経済的な負担がのしかかる。聞き取り調査では、約半数が現在や今後の生活について「不安や不満がある」と回答。新型コロナウイルスの感染拡大も響き、「収入面が不安」「ローンが残っているので体調を崩せない」などの訴えが目立った。

 金銭面の不安は、他人に相談しづらく、一人で抱え込みがちだ。公的融資や補助制度など、行政などによる積極的な情報提供が欠かせない。県の調べによると、熊本地震の「被災者生活再建支援金」を受給できるのに申請していない世帯が3月末時点で延べ7千を超えるという。市町村は、被災者の立場に立った対応に努めてもらいたい。

 コロナ禍はコミュニティーの再構築にも影を落とす。交流の機会や見守り活動が制限されるからだ。特に、高齢者世帯が半数を占める災害公営住宅(復興住宅)では、感染への懸念から周囲と触れ合う機会が減り、仮設住まいの頃よりも孤独を深めた人がいるというから心配だ。国がコロナ対応で検討中の孤独・孤立対策を被災地でも役立てたい。そのためにも自治体は、NPOなどの力も借りて実態把握を急ぐべきだ。

地域の結び直しを

 「仮設の時はみんな気持ちが同じだった。あの頃は良かった…」。益城町の木山仮設団地で毎週開かれる交流会。再建した自宅から遊びに来ていた高齢の女性がつぶやいた。仮設団地から住み慣れた地域に戻ったが、地震前と比べるとばらばらになった気がするという。

 地震の記憶は少しずつ薄れても、不安な日々を支え合った地域の温かさ、心強さは胸にしっかり刻まれているはずだ。地震の教訓を生かすためにも、もう一度地域を結び直したい。

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