松山選手快挙 分断超えるスポーツの力

04月13日 09:13

 日本人男子ゴルファーとして初のメジャー大会制覇を心から祝福したい。米ジョージア州オーガスタ・ナショナルゴルフクラブで開かれたマスターズ・トーナメントで、松山英樹選手が優勝した。

 マスターズは男子の四大メジャー大会で唯一、毎年同じコースで行われる。出場できるのは招待選手だけで、世界のトッププロが特別視する大会でもある。松山選手はその頂点に立ち、名実ともにゴルフ界の「マスター(名匠)」になった。大会制覇は日本男子はもとよりアジア勢でも初の偉業だ。新型コロナ禍で日本中に沈滞したムードが漂う中、粘り強く諦めない戦いぶりに勇気づけられた人も少なくなかったに違いない。

 松山選手は松山市生まれの29歳。4歳でゴルフを始め、東北福祉大2年だった2011年の春、19歳で初めてマスターズ出場資格を得た。大会直前に東日本大震災が発生。迷った末に被災者らの声に押されての出場だったが、27位で日本人初のベストアマチュアに輝いた。

 この経験から、被災した第二の故郷への思いをマスターズに重ねてきたという。13年にプロに転向し、その年の日本ツアー賞金王を獲得。翌14年に米ツアーでも初優勝を飾り、これまで米ツアー大会で5勝していた。

 ゴルフの日本男子勢にとって、海外のメジャー大会制覇は長年の悲願だった。マスターズにもこれまで、国内を代表する多くの名選手が挑戦したが、2001年の伊沢利光選手、09年の片山晋呉選手の4位が最高だった。

 近年、メジャー制覇に最も近いとされてきたのが松山選手だ。10度目の出場となる今大会では世界屈指とされる力強く正確なショットと小技が安定。着々とアンダーパーを積み重ね、最終4日目も後半苦しみながら逃げ切った。

 今年は新型コロナ禍で1年延期された東京五輪が開催予定だ。松山選手は男女8人の強化指定選手の一人であり、五輪での活躍も期している。先に水泳で五輪出場を決めた池江璃花子選手らと共に、力を存分に発揮してもらいたい。

 一方、世界ではコロナ禍に端を発しアジア系住民に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が横行。オーガスタがある米南部ジョージア州でも3月、アジア系女性6人を含む計8人が死亡する連続銃撃事件が起きたばかりだ。

 大会最終日の18番グリーンで待つ観客も、テレビ画像では白人主体に見えた。しかし、そこに現れた松山選手は盛大な拍手で迎えられた。分断が憂慮される時代にあって、長い伝統を持ち米ゴルフ界の殿堂とされるオーガスタでアジア人が勝った意味は大きい。1997年に黒人系で初めて優勝したタイガー・ウッズ選手と並ぶ歴史的出来事として記憶されよう。

 2月にテニスの全豪オープンを制した大坂なおみ選手は、折に触れて人種間の融和を訴えている。たとえ言葉に出さなくても、スポーツの感動には分断を超え、社会を結い直す力があると信じたい。

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