処理水海洋放出 信頼なき決定は禍根残す

04月11日 09:10

 東京電力福島第1原発で発生し続け、処分先が問題となっている処理水について、政府が海洋放出する方針を固めた。13日にも関係閣僚会議で正式決定するという。しかし、漁業者などは反発しており、政府や東京電力が十分な説明を尽くしたとは言い難い。多くの疑問や不安を残し、信頼を得られないままで強行すれば、禍根を残すことになる。

 第1原発では事故後、溶融核燃料(デブリ)に冷却水を注いできた。建屋に流れ込む雨水や地下水もあり、放射性物質を含む汚染水が大量に発生。多核種除去設備(ALPS)という装置で処理しているが、放射性物質トリチウムは除去できない。

 処理水はタンクに貯めて敷地内で保管しているが、これまでに千基を超えた。東電は来年秋以降に満杯になると見込む。このままでは今後の廃炉作業の妨げにもなるとされ、政府は処分方法を検討してきた。海洋放出を選んだ理由として、低濃度に希釈すれば安全性に影響がないことなどを挙げている。他原発で同種の水を放出していることも根拠の一つという。

 しかし海洋放出となれば、風評被害は避けられない。全国漁業協同組合連合会は強く反対している。地元では既に原発事故によって海産物が値崩れしたり、海外へ輸出できなくなったりする被害を受けた。新たな風評被害を招けば、復興途上にある水産業に重ねて大きな打撃となりかねない。

 東電は処理水の置き場がなくなると言うが、可能な限り保管場所の調達を図るのは企業の責務ではないか。専門家の中には、陸上での固化処分や、丈夫な大型タンクでの長期保管などの手法を検討するべきだとの意見もある。だが、政府と東電がそれらを真剣に検討してきたとは思えない。

 東電は最近も第1原発の地震計や柏崎刈羽原発(新潟県)の核テロ対策機器の故障を放置していたことで、国民の信頼をなくした。

 海洋放出に踏み切るにしても、開始までには工事などで2年程度かかるという。このまま断行すれば、地元などの反発と不安を招くだけではないか。納得に少しでも近づけるよう、政府と東電は処分場所や方法を含めてさらに検討を尽くすべきだ。

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