家電ナンバーワン決定戦　作・SA　＜くまにち童話＞

　誰だれもが寝ね静しずまった午ご前ぜん二に時じ、電でん器き屋やさんから話はなし声ごえが聞きこえます。「本ほん日じつは、お集あつまりいただきありがとうございます。これより、年ねんに一いち度どのビッグイベント、家か電でんナンバーワン決けっ定てい戦せんを開かい催さいします」。待まってましたと拍はく手しゅが起おこり、会かい場じょうは大おお盛もり上あがりです。

　「司し会かい進しん行こうは、昨さく年ねん度ど優ゆう勝しょうの私わたし、テレビが務つとめさせていただきます。この後あとは、今年ことしのナンバーワンを決きめるためのアピールタイムです。我われこそはという家か電でんの皆みなさん、アピールをお願ねがいします。ちなみに私わたしは、2連れん覇ぱを狙ねらっております。何なんといっても人にん間げんの生せい活かつに欠かかせないのは私わたしですからね」。テレビは得とく意いげに画が面めんを次つぎ々つぎと変かえてみせました。

　すると掃そう除じ機きが言いいます。「テレビなんてスマホで十じゅう分ぶん。今年ことしの優ゆう勝しょうはオレさ。ごみもほこりもどんどん吸すいとるオレの吸きゅう引いん力りょくを見みてみろよ」。洗せん濯たく機きが言いい返かえします。「掃そう除じなんてほうきで十じゅう分ぶんよ。洗せん濯たくを洗せん濯たく機きなしですることを考かんがえてみてよ。重じゅう労ろう働どうよ。人にん間げんに一いち番ばん必ひつ要ようなのは私わたしなの」。

　今こん度どは、ハッハッハッと笑わらいながら扇せん風ぷう機きが登とう場じょうしました。「オレ様さまの存そん在ざいを忘わすれちゃいないかい。今年ことしの夏なつは休やすみなしだったぜ。優ゆう勝しょうはオレ様さまのものだぜ」。こたつが反はん論ろんします。「おまえなんか夏なつだけだろ、引ひっこんどけ。優ゆう勝しょうはこたつさ。冬ふゆはおいらが1番ばん。一いち度ど入はいったら出でられないのさ」「おまえだって冬ふゆだけだろ」。扇せん風ぷう機きが鼻はなで笑わらいました。痛いたいところを突つかれたこたつは温おん度どが上あがり、顔かおが真まっ赤かになりました。

　その時とき誰だれかが言いいました。「冷れい蔵ぞう庫こじゃないか」。また誰だれかが言いいました。「確たしかに、冷れい蔵ぞう庫こは年ねん中じゅう無む休きゅうだ。冷れい蔵ぞう庫こが優ゆう勝しょうだ」。黙だまって話はなしを聞きいていた冷れい蔵ぞう庫こが、口くちを開ひらきました。「皆みなさん、私わたしたちの仕し事ごとは人にん間げんの暮くらしを豊ゆたかにすることです。皆みなさんそれぞれに、誰だれにもまねできない良よいところがあります。1位いも2位いもない、みんなが優ゆう勝しょうでいいじゃないですか」。冷れい蔵ぞう庫こがほほ笑えみ、家か電でんたちは顔かおを見み合あわせてうなずきました。

　「発はっ表ぴょうします。今年ことしの家か電でんナンバーワン決けっ定てい戦せんの優ゆう勝しょうは、家か電でん全ぜん部ぶに決きまりました」。テレビが言いうと、会かい場じょうはあたたかい笑え顔がおと拍はく手しゅに包つつまれました。（作さく者しゃは熊くま本もと市し・主しゅ婦ふ・42歳さい）