「下流の安全のためなら」 球磨川治水対策の候補地住民 地域再生に不安の声も

熊本日日新聞 | 2021年03月25日 09:51

球磨川流域治水協議会のオンライン中継を見守る傍聴者=24日、熊本市中央区のホテル熊本テルサ

 昨年7月の豪雨で氾濫した球磨川の流域治水プロジェクトがまとまった24日、遊水地などの対策が取られる候補地の住民は、下流域の安全に一定の理解を示した。ただ、立ち退きや農地提供を求められる可能性があり、地域の再生に不安を抱く声も聞かれた。

 洪水時、一時的に水をためる遊水地の候補とされた熊本県人吉市の大柿地区。住民説明会があった2月以降、国の詳しい説明はなく、仮設団地で暮らす町内会長の一橋國廣さん(76)は「転居を決めた人もいれば、残ることを強く望む人もいる。地元としてどうしたらいいのか分からない」と頭を抱える。

 球磨村渡の茶屋地区では、川幅を広げる引堤[ひきてい]が検討されている。自宅が全壊した村議の舟戸治生さん(69)は「下流の安全が図られるのならば、立ち退きに応じてもいい」としつつ、コミュニティーの維持を重視。「近くの安全な高台にまとまって移転できればいい」と期待した。

 八代市坂本町で提案されたのは、輪中堤[わじゅうてい]や宅地かさ上げなど。地元の復興推進部会で副部会長を務める松嶋一実さん(73)は「治水策が講じられた後、住民が戻ってくるのか不安は拭えない。活気あるまちづくりのための具体案を示してほしい」と切望した。

 一方、「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」の緒方紀郎事務局次長(58)は「事業ありきの案にしか見えない。0点だ」とばっさり。「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」共同代表の中島康さん(80)は「住民の合意の程度に合わせ、治水策を見直せる仕組みが必要だ」と国や県にさらなる説明を求める姿勢を示した。

 「美しい球磨川を守る市民の会」代表の出水晃さん(76)は、瀬戸石ダム(芦北町、球磨村)に関連して「危険性を検証しない一方で、流水型ダム建設にこだわった」と強調。「住民の声を聞かなかったプロジェクトは、誰のためなのか」と訴えた。(隅川俊彦、臼杵大介、堀江利雅、緒方李咲)

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