汚染魚多食を映画で訴え 水俣病訴訟、原告が提出 熊本地裁

熊本日日新聞 | 2021年3月18日 09:47

 熊本県水俣市の倉本ユキ海さん(66)が母チズさん(故人)を水俣病患者として認定するよう県に求めた訴訟は17日、熊本地裁で口頭弁論があり、1950年代の魚食の実情を理解してもらうため原告側が証拠提出した記録映画が上映された。

 映像を通して水俣病を告発し続けた土本典昭さん(故人)が監督を務めた74年の作品「医学としての水俣病 証言篇」のうち、約7分間が法廷のモニターに映された。

 この中で水俣病1次訴訟の原告団長だった渡辺栄蔵さん(故人)は「水俣病患者は医者に栄養を取れと言われた。魚以外なかったわけで、水銀ば拍車をかけて腹の中に入れることになった」などと証言している。

 チズさんは水俣市の沿岸部で生まれ育ち、2004年に87歳で死去した。

 認定申請を棄却した県は裁判で、「メチル水銀で汚染された魚介類を多く食べたとはいえない」と主張。倉本さんは閉廷後、「当時の実情を知る貴重な映像。裁判官にも伝わったはず」と話した。(堀江利雅)