「刺し子」売上金、豪雨被災の人吉応援 東日本大震災、岩手・大槌町の女性ら

熊本日日新聞 | 2021年03月07日 16:00

豪雨被害に遭った人吉市を支援する「大槌刺し子プロジェクト」の(左から)佐々木加奈子さん、黒澤かおりさん、佐々木静江さん=2月24日、岩手県大槌町

 東日本大震災で被災した岩手県大槌町の女性らが、東北に伝わる伝統的な刺しゅうを通して地域を元気づける「大槌刺し子プロジェクト」に取り組んでいる。昨年7月、熊本県南部を中心に豪雨災害が起きると、「支援のバトンをつなぎたい」と売上金を人吉市へ届けた。

 人口の1割に近い1286人が津波の犠牲になった大槌町。一時は約9千人が避難し、町全体が打ちひしがれていた。避難所生活も長引く中、手仕事を通して被災者の生きがいづくりや地域の再興ができないかと考え出されたのが刺し子プロジェクトだった。

 「働き者のおばあちゃんや主婦が、何もできずに一日過ごしていた。何か集中できることがなければ、心は暗くなるばかりだった」とプロジェクト事務局の佐々木加奈子さん(43)。被災の約3カ月後には京都市のNPO法人が復興支援として、本格的なインターネット販売や技術の普及を始めた。

 現在は被災した60~80代の女性ら30人がハンカチやバッグ、洋服などを作り、収入にもつなげている。ただ、ここまでたどり着くには長い歳月を要した。佐々木さんは「昨年やっと自宅を再建したメンバーもおり、復興は道半ば。多くの支援で前を向けるようになった」と説明する。

 そうした中、熊本県南部の豪雨災害の報道が伝わった。水没した集落や救助される人の姿を見て、佐々木さんは「大槌の津波と同じだと被災当時を思い出し、胸が苦しくなった」と振り返る。

 豪雨被災地の支援のため何かできないかと始めたのが、新たなデザインのトートバッグなどの制作。京都市のNPO法人とつながりのあった人吉市の被災者支援団体「人吉市復興支援プロジェクト」に売り上げの半分を届けた。

 人吉市のこの団体は、被災家屋から土砂や家財道具を搬出する支援者へ軽トラックを貸し出す事業に支援金を活用。団体の事務局となっている市しごとサポートセンターの松山真一センター長(66)は「同じ痛みを知る東北の皆さんからの支援は特別。人吉を勇気づけた」と感謝する。

 新型コロナウイルス禍が収まれば、人吉の仮設住宅などを訪れて刺しゅうを伝えられないかと佐々木さんらは考えている。「10年間の支援に対するお礼と、いつか必ず立ち直れるというエールを込め、熊本とつながり続けたい」(堀江利雅)

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