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  渡辺京二さん「黒船前夜」 毎週木曜に連載

 10日夕刊から毎週木曜日、在熊の評論家渡辺京二さんの長期連載「黒船前夜」がスタートした。十八世紀末から、ペリーの黒船が来航する十九世紀半ばにかけ、日本近海に出没した外国船の人々の記録や古書から、その時代と日本の原風景を明らかにしていきます。和辻哲郎文化賞などを受賞した著作「逝きし世の面影」(葦書房)発表から十年。同書から時代をさかのぼる待望の書き下ろしです。

  執筆者の渡辺京二さんに聞く 日ロ、アイヌとの関係に注目

 十八世紀末に始まる日本と外国との接触をさまざまな角度からひもとく評論家・渡辺京二さん(熊本市)の長期連載「黒船前夜」(週一回)が十日付夕刊から始まった。和辻哲郎文化賞や熊日出版文化賞を受賞した「逝きし世の面影」(葦書房)に連なる論考になる。渡辺さんに執筆意図や構想を語ってもらった。

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長期連載「黒船前夜」について語る渡辺京二さん=熊本市(野田徹)
 「逝きし世の面影」には「日本近代素描1」とサブタイトルを付けた。付けなければよかったと重荷に感じているが、2は開国を書こうと考えている。ただ、いわゆるペリー来航を中心とした幕末から維新に至る“歴史”は書く気がしない。

  これまで、明治維新については批判的な見方はあっても、それによって日本の近代が開かれたという意義は誰もが認めていた。しかし近年は、明治維新がつくり上げた近代国民国家というものが今日の不幸を呼び寄せた元凶だとの見方もある。維新のとらえ方が混とんとしてきていて、いきなりは踏み込めない。

  では、どういう角度から書いていくか。「逝きし世―」でも取り上げたが、一つは異文化との接触だ。

  私が書く歴史は、エピソードから成り立っている。政治史や経済史ではない。それが人間の歴史だと思っている。外交の過程でも、政治史に出てこないような異文化との接触で生じる食い違いなどが重要と思う。外交記録などの中から、あまり知られていない新鮮なエピソードを取り上げ「逝きし世―」の手法で書いていこうと思う。

  開国に向けた過程は早くから始まっている。その中では、十八世紀末から十九世紀初めにかけて、ロシアが日本に開国を促したのが大きな出来事だったと思う。

  ロシアと日本のかかわりには面白い面がある。一つは蝦夷(えぞ)をめぐる駆け引き。ここにはアイヌがいる。アイヌが住むクリール(千島列島)から南樺太(からふと)辺りをどちらが手に入れるかという争いだ。

  十八世紀末ごろのロシアと日本は、双方とも近代的国民国家を形成していく過程にあった。十六世紀から近代が始まったとする最近の世界史の理論でいえば「アーリーモダン」の段階。十九世紀の産業革命以降、現代へとつながる新しい近代が始まる。ペリー来航は、新しい近代を迎えたアメリカと、まだアーリーモダンの段階の日本との接触だった。

  しかし日ロの接触は違う。共にアーリーモダンの段階にあり、新しい近代を模索していた。そうした時に、近代国民国家を形成しようとせず、違う道を歩んでいるアイヌという民族と出合って、どちらが取り込むかという駆け引きをやった。そこが面白い点だ。

  ロシアに関しては、日本へ手を延ばしてくる過程のシベリア開拓史も面白い。アングロサクソンとは違うけた外れの欲望があり、何とか日本にやって来て交易したいと考えている。その中にもさまざまなドラマがある。

  一方、日本側から見ると、ロシアの脅威が迫ってくるのは蘭学(らんがく)の興隆期に当たっている。田沼意次(おきつぐ)が幕政の中心にいた時代で、経済的にバブル期でもあった。このころから新しい精神的、文化的な動きが起こってきて、日本の近代を模索していける時代になった。そこでロシアと接触し、交渉していくということになっていく。

  それから、限られた連載期間の中でどれだけ書けるか分からないが、北方での動きとセットで取り上げたいのは沖縄。琉球には早くからイギリスが来ているし、幕末にはフランスが訪れる。外国船と沖縄の対応を扱った通史は少ないので、書いてみたい。北方と南方の二つを書き、「日本近代素描2」にしたいと思っている。(構成・富田一哉)

  ○わたなべ・きょうじ 1930年京都市生まれ。旧制五高を経て法政大社会学部卒。著書に「日本近世の起源」「評伝 宮崎滔天」など多数。「逝きし世の面影」(98年)で和辻哲郎文化賞、熊日出版文化賞受賞。熊本市在住。



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