国広 富之さん(俳優)
=>ミニトークアドバイザー
「子育ては出たとこ勝負」 成長見守り感動を共に
テレビや映画、舞台で活躍し、二枚目からコミカルな役まで幅広くこなす俳優の国広富之さん(53)。国広さんは高校1年、中学1年の女の子と、小学3年の男の子のパパでもある。「子育ては出たとこ勝負」という国広さんに、“トミー流子育て”について聞いた。
―忙しい俳優業の傍ら、どのように子どもとかかわってきた?
「僕の仕事は自由にスケジュールがコントロールできないし、時間も不規則。だから時間を見つけ、公園で遊んだり、自転車の前後に子どもを乗せて散歩に出掛けたりして遊んでいました。もちろんおむつ換えやミルクを飲ませたりもしましたよ。妻から“教育”されましたから」
―子どもとのかかわりで大切にしてきたことは。
「スキンシップで、今も大切にしています。小さいときは抱っこしたり、高い高いをしたり…。それに子どもは背中からダイビングするなど過激な遊びを喜びます。三人を何度も繰り返しているとフラフラになりましたが、心の中から純粋に、楽しそうに笑う子どもの声を聞くのって気持ちいいんですよね」
◇くにひろ・とみゆき 1953年、京都市生まれ。大学卒業と同時に上京、77年にドラマ「岸辺のアルバム」(山田太一脚本)でデビュー。同年にテレビ大賞新人賞、ゴールデン・アロー賞放送新人賞を受賞する。その後「赤い絆」「噂の刑事トミーとマツ」「ふぞろいの林檎たち」「失楽園」などのドラマに出演。映画、舞台でも活躍する一方で、絵画、陶芸なども手掛ける。
―子育てで思うことは。
「出たとこ勝負ということかな。妻が熱心に勧めるので、僕も育児書を何冊も読みました。妻も長女が生まれたとき、本で学ん だことがわが子に当てはまらないと『何でこの子は』と悩んでいたことがあります。でも子どもって型にはまらないもの。育児書の知識を当てはめようとしても無理なんです」
「無責任かもしれませんが、僕は子どもなんて自然に育つんじゃないかと思う方。ただ子どもがどこにいても『今、何をしているのかな』と気をかけるようにはしています。その思いが子どもに届くかは別にして、そうすることで何かが違ってくると思っています」
―思春期の接し方は。
「いま娘がそうだと思うのですが、気にしないことにしています。小さなときからの“抱き締め、高い高い作戦”があったからかな。子どもの機嫌をうかがって子どもに合わせるよりも、いつもの親のペースで接すればいいんだと思っています」
―子育ての経験が仕事でも役立っている?
「生まれて学校を卒業し、就職して結婚、子どもが生まれ、その子が成長して孫ができ、死んでいくというベーシックな大きな流れが、人生にはあるでしょう。僕たちの仕事はそこのところがきちんとできている方が、想像でやるよりもいいんです。子どもをほしがる親などの役を演じる上で、心の震えなどを再現するのに、気持ちを込められます。でも、『事実は小説より奇なり』というように、現実の方は終わらないドラマですからね。感動、悲しみ、時には怒り…。毎日小さなお話がわが家では続いていますよ」
―子どもの面白さって?
「長男が少し大きくなって気付いたのですが、無意識に自分のことを投影しているんです。妻が『何でこんなものが好きなの?』というようなことが、なぜ長男が好きなのかを僕はよく分かるんです。庭のダンゴムシやアリなどに興味をもった時は、『僕も好きだったし、こいつにはいろいろなことを教えることができる』と共感を覚えました」
「長男が幼稚園のころから、毎年カブトムシ捕りに連れていっています。幼稚園の帰りにクヌギ林に入って捕まえたとき、とても喜びました。自然の中で捕まえたことと、パパが捕まえてくれたことで感動したのだと思います。その時、自分が子どものころ、小さなカブトムシが手のひらいっぱいの大きさに見えたことなど、忘れていた感動を思い出させてくれたんです」
「僕の場合、子どもがいる幸せをかみしめるのは、子どもと一緒のときではなく一人になったときです。そしてその思いは思い出のたんすの中に大切にしまいます。一人の人間が生まれて成長していく姿を近くで見守り、そして笑い、泣き、感動を共にできる喜びは大きいと感じています」
熊本日日新聞 2006年8月31日朝刊掲載
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