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【余論】「ゆりかご」の責任 2017年10月08日

 理想が正しいからといって、その取り組みや結果のすべてが正当だとは限らない。熊本市の慈恵病院のこうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)はどうか。このほどまとめられた市設置の専門家部会の報告書は、ゆりかご開設からの10年を冷静に分析していると思う。

 病院は「遺棄される命を救う」という理念で、ゆりかごの運用を始めた。報告書はその効果について「検証できない」とした。命を救えたかどうかは推測するしかないからだ。

 一方ではっきりしたこともある。まずは計130人が預けられ、そのうち26人の身元が児童相談所の調査によっても分かっていないという事実だ。報告書はこれを「出自を知る権利の阻害」とした。身元不明の子どもたちが健康保険を受けられないという問題もある。中には外国人の子どもも預けられており、在留資格をどうするかも解決できていない。

 さまざまな問題からだろう。モデルとなったドイツでは、既にポストに代わる「内密出産」という制度に対応が移ってきているという。

 病院は「入り口」として子どもを受け入れているが、その後の養育などには多大な社会的コストがかかる。親を突き止めるための児相による調査、養護施設などでの養育や医療費などだ。もともと一病院だけでできる取り組みではない。成長した子どもたちが将来、出自をめぐって「人権を侵害された」と訴えたときに、だれが責任を取るのだろうか。

 報告書は、病院や国などに具体的な改善策を求めた。子どもを預けにきた親への積極的な接触や、内密出産制度の検討などだ。少なくともこれらを誠実に聞き、設置や運営の見直しに生かすべきだろう。(農孝生)


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