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「偏見」と「共感」 2017年02月17日

 「福島県民お断り」-。こんな表題の作文が、昨年末から一部で話題になっている。書いたのは宮城県女川町の中3女子。全国中学生人権作文コンテスト宮城県大会で法務局長賞を受けた文章は、熊本の私たちにとって胸が痛む内容だ。

 彼女は福島県内で生まれ育ち、東京電力福島第1原発事故が起きると家族で栃木県へ。避難途中に「福島県民お断り」と記したステッカーを貼った車を目にし、「『え?』とただただパニックになり、意味を理解したとき、悲しい気持ちになりました」。それから5年。祖母の知人が熊本地震の被災地に物資を届けた際の出来事を挙げ、「偏見はまだまだ消えていません」と書いている。

 知人は「福島の物資はいらない」と拒否されたという。別の場所で渡せたが、「このようなひどい言葉」に「私が育った町や人が否定されるならば、私の今までの人生までも否定されている気がしました」。彼女の文章には深い嘆きがにじむ。

 熊本地震以来、私たちは多くの支援を受けている。中でも東日本や阪神、新潟などの人々の、実体験を踏まえた物心両面の支援は本当に心強い。福島の人々は原発事故という未曽有の脅威にさらされ続けながらも、熊本に心を寄せてくれている。

 だからこそ熊本の被災者による支援拒否は、一部であったとしても悲しい。もし、無関心や無理解による偏見があったとすれば、あまりに情けなく、恐ろしささえ感じる。

 小5で女川町へ転居した彼女は、福島県民への偏見を恐れた。しかし転校先の同級生が最初に掛けてくれた言葉は、「大変だったね」「一緒に遊ぼう」。気遣いだった。

 彼女は、偏見の対極に「共感」があると書いた。「傷ついている人がいたら共感し、手を差し伸べることができる人間になりたい」。傷ついたが故に抱く心の温かさを、私たちも持ち続けたい。(小多崇)


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