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射程

被災者復興の司令塔 2017年01月10日

 昨年末、本紙で連載した「支援のカタチ」は、熊本地震からの復興を側面から支える民間の取り組みを紹介した。その中で取り上げた兵庫県の第三者機関「被災者復興支援会議」は、ある人物のイメージを重ねて、故貝原俊民知事の提唱でつくられた。神戸市出身で大正・昭和期の社会運動家、賀川豊彦である。

 賀川は、生協の生みの親として知られ、貧しい人々の救済に生涯をささげた。1923年の関東大震災では「被災者の目、耳、口にならなければならない」と被災地に入り、支援活動に従事。震災のたびにボランティアに携わる生協の活動は、そんな賀川の博愛主義が原点とされる。

 阪神大震災後、貝原氏が復興支援会議に期待したのも、声を上げられない被災者の思いを代弁し、光を当てる役割だったという。復興における行政の限界を認識していたのではないだろうか。

 年が明け、熊本でも復興という言葉を耳にしない日はない。蒲島郁夫知事は年頭会見で「復興の歩みを力強くする」と語り、恒久住宅整備や熊本空港を核とした振興策などを打ち出している。むろん、創造的復興に向けたインフラや経済活性化の重要性を否定するつもりはない。

 ただ、復興の核心である被災者への目配りは十分だろうか。生活再建は地域や個人で異なり、支援策も千差万別だ。しかも時間とともに状況もニーズも変化していく。本来、施策の立案は被災者のニーズ把握が前提となるべきだが、行政は「十分に把握できている」と自信を持って言い切れるだろうか。

 過去の震災を顧みると、通底しているのは、被災者への人の支えがあり、そこから自立の精神も生まれた点だ。長期に及ぶ被災者の復興には県民全体で支える共助の視点が欠かせない。熊本にも、被災者の声をすくい上げ、道標を示す司令塔が必要ではないか。(毛利聖一)


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