くまにちコム:熊本のニュース速報なら熊本日日新聞

テキスト版サイトマップ


くまにちコム トップ > 社説・射程・新生面 > 射程 【余論】被災地の子どもの思い


射程

【余論】被災地の子どもの思い 2017年01月08日

 昨年12月、東日本大震災の被災地で学習支援を続けるNPO法人カタリバ(東京)の取材で宮城県女川町を訪ねた際、高校1年の高橋杏斗[きょうと]さんと知り合った。女川は津波で800人以上が犠牲となり、7割近くの住宅が全壊。彼は10歳になったばかりで長期避難を強いられた。

 出会って20日後、年の瀬の益城町に彼はやって来た。「避難所は子どもにとって本当に窮屈でした」-中高生の交流会で当時の思いを語った。「見たくもない大人のけんかも見た。窮屈だと一番感じたのは、何をするにも大人というフィルターを通さなければならなかったこと。自分のしたいことができなかった」。その経験が、いつしか彼を尻込みしがちな少年にしていたという。

 「やりたいと思ったら実行に移さないといけない」。高校生になり、その思いを実現したのが今回の熊本訪問。益城町でも放課後学習の場を設けるカタリバが縁を結んだ。「熊本に行って力になりたい」と公言した通り、彼は自らの「震災後」を伝え、熊本の子どもたちを励ました。

 被災者はさまざまな思いを抱え、日々を生き抜いている。だが、誰もがその思いを声高に叫び、要求を口にするわけではない。中でも子どもは、自身の考えを的確に表現できないだけでなく、周囲を気遣ってその思いを封じ込めるといわれる。成長した高橋さんが語ったことは、熊本地震で被災した子どもたちの心情を代弁しているかのようだった。

 交流会では東北や関東、関西、そして熊本の中高校生が語り合った。「刺激を受けた」という高橋さんは夢を描く。「女川に高校生カフェをつくりたい。いろんなことを語り合える交流の場にするんです」と。(小多崇)


射程 記事一覧




個人情報保護方針著作物の利用についてお問い合わせ

↑このページの先頭へもどる


無断転載は禁じます。「くまにちコム」に掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。

Copyright(C) 熊本日日新聞社,All Rights Reserved.