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射程

“従業員ファースト”へ 2016年12月28日

 電通社員の過労自殺を受け、政府は悪質な企業名の公表対象拡大などを柱とする緊急の長時間労働対策をまとめた。背景には安倍政権が目玉に掲げる働き方改革の成果が見えてこない焦りもあるのだろう。ただ公表する際の条件が厳しく、実効性には早くも疑問符が付いている。

 長時間労働の抑制には残業時間の上限設定といった規制の検討とともに、企業が自ら改革に取り組む姿勢が欠かせない。企業の中には、政府に背中を押されなくても働き方改革に熱心なところもあるようだ。

 国内各地の好業績企業を紹介したシリーズ本「日本でいちばん大切にしたい会社」(あさ出版)には、社員重視の経営姿勢を貫く経営者が多く登場する。著者で法政大大学院の坂本光司教授によると、社員満足度の高い会社はモチベーションが高く、業績にも好影響を及ぼしているという。

 坂本教授は今月、熊本市内で講演し、「人を大切にする会社を増やせば少子高齢化なども解決できる」と強調。約700社のデータから、リストラや過度な残業がない会社のほとんどの従業員に2人以上子どもがいると報告した。

 業種などによって求められる働き方は千差万別だ。ただ共通して重視されるべきは労働時間ではなく、生産性であろう。業務の中で無駄な会議や報告書の作成はないか。ダラダラと会社にいるのが美徳という空気を取り除くことも課題だ。日本生産性本部のまとめでは、日本の労働生産性は先進7カ国で最も低く、改善の余地はまだまだ大きい。

 「伝統を重んじることに囚[とら]われることなく、働く人全ての人の意識が変わって欲しい」。自殺した電通社員の母親が25日の一周忌に公表した手記の結びだ。きょうで仕事納めのところも多いはず。1年の働き方を見つめ直し、“従業員ファースト”に少しでも近づけたい。(前田克)


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