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社説

ノーベル平和賞 核廃絶推進の契機にしたい 2017年10月08日

 「ノーモア・ヒロシマ」「ノーモア・ナガサキ」の訴えを世界に一層浸透させていく契機にしたい。今年のノーベル平和賞に、国際非政府組織(NGO)の核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が選ばれた。

 最大の授賞理由は、122カ国・地域の賛同を得て国連本部で7月に採択された核兵器禁止条約において主導的な役割を果たしたことだ。

 その活動の原点にはICANの関係者が語ったように、広島、長崎の被爆者たちの証言活動がある。今回の授賞決定は被爆者の長年の尽力と多大な貢献に対するねぎらいのメッセージでもある。心から祝福したい。

 ノルウェーのノーベル賞委員会は、核兵器は人類と地球上の全ての生物にとって持続的な脅威、と指摘。核開発を進める北朝鮮を名指しし、より多くの国が核兵器を手に入れようとする脅威が現実のものになっているとした。授賞を通じて、核抑止力への依存を強める核保有国やその同盟国に核廃絶に向けた協調を迫り、「核なき世界」という理想に近づけたいとの強い意向がうかがえる。

 ICANは核廃絶を目指して、2007年にオーストラリアで設立されたNGOの連合体だ。平和や軍縮、人権といったテーマに取り組む約470団体で構成される。メキシコやオーストリアなどの核廃絶推進国と連携。広島、長崎の被爆者とも「二人三脚」で、核使用がもたらす「非人道的な結末」を国際世論や各国政府に訴え掛け、核兵器禁止条約の採択に向けた下地を築いてきた。

 活動の背景にあったのは、核保有国が核軍縮努力を怠っていることへの不満と強い危機感だ。米ロ関係悪化に伴う核軍縮の停滞をはじめ、インドとパキスタンの核軍拡競争、北朝鮮の核開発に象徴される核拡散の脅威など、核に絡むリスクは高まる一方である。

 核軍縮関連のノーベル平和賞は8年前に「核兵器なき世界」を唱えて受賞したオバマ前米大統領以来だが、今や米国でその理念は色あせている。トランプ大統領は核開発を進める北朝鮮に核の使用も辞さない言動で挑発。むしろ危険な方向へと向かっている。

 今回の授賞決定は、被爆国でありながら核兵器禁止条約に背を向ける日本政府にも厳しい視線を投げかけていよう。

 政府は安全保障上の脅威が高まる中、核の全面禁止は現実的でないとして条約制定に向けた交渉の段階から不参加を決め込んでいる。米国の「核の傘」の下にあるという事情から、米国と歩調を合わせた格好だ。

 しかし、世界で唯一の被爆国として日本が果たすべき役割は大きい。むしろ条約に不参加の核保有国に核廃絶論議に加わるよう、橋渡し役をするのが本来の姿ではなかろうか。

 10日公示の衆院選では米国の核戦力に依存した安全保障が最適なのかを含め、核との向き合い方についても議論してもらいたい。


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