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社説

改憲論議 「混乱に乗じ」は許されぬ 2017年10月05日

 今回の衆院選は、憲法改正論議の行方を大きく左右することになりそうだ。

 自民党は改憲に強い意欲を示す安倍晋三首相の下、第2次政権での国政選挙で初めて公約に憲法改正を明記した。小池百合子東京都知事が代表の希望の党も公約の骨格で「9条を含め議論を進める」とし、日本維新の会も改憲を公約している。一方、希望の党に排除された民進党前議員らでつくる立憲民主党は、一字一句変えない護憲ではないものの「安倍政権下の憲法改悪に反対」の立場。共産党などは改憲に反対する。

 憲法は国の基本理念だ。憲法に関する議論は、どういう国家、社会を築くのかを土台に行われるべきであり、「改憲ありき」で進めてはならない。どの政党が国の将来像を描く憲法論議に真摯[しんし]に向き合い、自らの理念を語るのか。その姿勢を見極めたい。

 自民党公約は6本柱の一つに改憲を掲げた。首相が提起した9条への自衛隊明記や教育無償化、緊急事態対応、参院選の合区解消の4項目に関し、「党内外の十分な議論を踏まえて改正原案を国会発議し、国民投票を行う」としている。

 だが、どの条文をどう直そうとするのかは具体的には記していない。いずれの項目も自民党内の議論は集約されておらず、突然の解散で中身を練り上げる余裕がなかったようだ。衆院選の結果、安倍政権の継続が決まれば、首相は「国民の信任を得た」として改憲4項目の議論を一気に加速させるつもりなのだろう。

 しかし、まず問われるべきは憲法に対する安倍首相の姿勢ではないか。第2次政権発足後、改憲条件を緩和する96条改正を打ち出したが、批判を受けて封印。今年5月の憲法記念日には、2020年の改正憲法施行を目指すと表明。戦力不保持を定めた9条2項を維持したまま自衛隊を明記するという、党内でも議論されていない「加憲案」を提起した。

 さらに国会で野党から見解を問われると、首相と党総裁の立場を使い分けて答弁を避けた。こうした手法からのぞくのは「中身より、まず改憲」という姿勢だ。拙速は混乱と不信を招くだけだろう。

 一方、希望の党は、消費増税凍結や原発ゼロで安倍政権への対立軸を示しているが、民進党出身者に憲法観や安保政策で踏み絵を迫った姿勢からは自民党との違いが極めて不鮮明だ。こだわる憲法観や9条改正の中身について分かりやすく示すべきだ。

 ルール無視のような安倍首相による突然の「国難」解散、野党第1党の民進党は新党への「合流」に失敗し分裂…。混乱劇は政治の今、そしてこれからを非常に分かりにくくしている。混乱に乗じた改憲論議の加速は許されない。「安倍協力勢力」対「反安倍」、「保守」対「リベラル」は今回の選挙を読み解く一つの鍵だろう。しっかりと方向性を見極めたい。


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