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社説

「1社応札」解禁 工事費高騰への対応急務だ 2017年08月13日

 熊本地震などの災害関連工事の一般競争入札について、県は1社しか参加しない「1社応札」を認める方針を決めた。落札者が決まらない「不調・不落」を減らす狙いだが、過去には競争原理が働きにくいとの理由から「1社応札は入札不成立」とした経緯がある。あくまで緊急事態への対応ということを忘れてはなるまい。

 1社応札が問題化したのは4年前。2012年の九州北部豪雨で被害に遭った阿蘇地域などの復旧工事で、1社のみが応札し、入札額の上限である予定価格に近い高値で落札する事態が相次いだ。競争原理が働いていなかったことを示唆しており、業界内部からも「不自然」との指摘があった。

 本紙がそのことを報道したのをきっかけに、県は13年5月以降、1社応札の場合、再入札することを決めた。それまで県は、法的に問題ないとはいえ、公正な競争や税金の無駄遣いの排除といった入札制度本来の目的とは相いれない1社応札を認めていた。

 県は今回、「不自然な入札が増えれば不成立に戻す」としている。談合の温床になっていないか監視を強化するためにも、県は今後、1社応札の割合や、予定価格に対する落札価格の割合である落札率などを定期的に集計し、公表するべきだ。

 県によると、県発注工事の不調・不落の割合は地震後増え始め、17年1月は20%、5月は50%に上った。17年度は土木工事だけで約1200件の発注が見込まれており、県は復旧の遅れを懸念し1社応札の解禁にかじを切った。

 しかし、それだけで懸念を払拭[ふっしょく]できるわけではあるまい。不調・不落の内訳をみると、1社応札は2割程度にとどまり、大半は入札に誰も参加しないケースだ。業界関係者によると、技術者や機材不足による人件費、機材費の高騰と材料費の値上がりを背景に、実際の工事費が県の予定価格より高くなる採算の取れない工事が多いからだという。

 20年の東京五輪を控え建設需要が高まり、国内全体で人手や機材は不足している。県内では復旧関連に加え、熊本市の桜町地区再開発事業などもあり、人件費や材料費が高騰した状態は当分、続くとみられる。

 国もその事態を認識し、「熊本地震からの復旧・復興工事を加速させる」として17年2月以降、県内での公共工事の予定価格を決める際、現場管理費を基準の1・1倍に引き上げるなどの対策を講じた。しかし、工事費高騰の勢いには追いつかず、県は国に対策強化を追加要望するとしている。

 入札制度が成り立つのは適正な予定価格があってこそだ。県は工事費高騰の実態をより詳細に調べ、事業者が採算の取れるような予定価格を算出する必要がある。現状のままでは、工事の質に影響したり、談合を誘発したりといった新たな懸念も生まれかねない。復旧・復興のスピードを上げるためにも、県は国との協議を急ぐべきだ。


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