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社説

「残業代ゼロ」法案 疑問多い連合の方針転換 2017年07月17日

 高収入の専門職を労働時間規制や残業代支払いの対象から外し、仕事の成果に応じた賃金を支払う「高度プロフェッショナル制度」について、導入に反対していた連合が容認姿勢に転じた。新制度を含む労働基準法改正案は働き過ぎを防ぐ措置を強化する方向で修正され、秋の臨時国会で働き方改革関連法案と一括審議される見通しとなった。

 これまで連合は、労基法改正案を「残業代ゼロ」法案と呼んで反対してきたが、残業の上限規制を柱とする働き方改革法案との抱き合わせでの受け入れを政府から迫られ、やむなく方針転換した格好だ。しかし、唐突な翻意には傘下の労働組合からも批判の声が噴出している。雇用主に比べ力の弱い労働者をどこまで守れるのかも疑問だ。新制度が「アリの一穴」となり、労働時間規制がなし崩しに甘くなる懸念もある。

 高度プロフェッショナル制度は、年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発などの専門職が対象。政府と連合は、年104日の休日を企業に義務づけることで合意したほか、(1)仕事を終えて次に働き始めるまでに一定の休息を設ける「勤務間インターバル制度」(2)働く時間の上限設定(3)連続2週間の休日取得(4)臨時の健康診断-のうちいずれかを労使に選ばせることでも一致した。決められた時間を超えて働いた場合は残業代を支払わない「裁量労働制」に関しては、連合側が対象業務の明確化を求めた。

 内閣支持率が急落し、東京都議選で自民党が惨敗を喫した直後だけに、連合の譲歩は政権にとって渡りに船だったろう。秋の臨時国会で連合や野党が反対したまま重要法案の採決を強行すれば、世論のさらなる反発は必至だからだ。

 とはいえ、年104日の休日は祝日を除いた週休2日制にすぎない。四つの選択肢の中には経営側が選びやすい案も盛り込まれた。さらに、新制度が導入されれば対象者の労働時間の把握が甘くなる恐れがあり、現場からは、成果主義の過剰な高まりやサービス残業の増加を心配する声も出ている。

 日本では長い間、長時間労働が容認されてきた。労働時間の上限を1日8時間、週40時間とする労基法の規制を「形骸化している」とみる労働者も多い。しかし、電通の違法残業事件などをきっかけに、まともな働き方を求める機運が高まり、安倍政権もようやく働き方改革に着手した。

 ここで新制度を導入すれば、対象者は働き方改革の枠から外れることにもなりかねない。政府は「時間に縛られずに効率的で柔軟な働き方ができる」と強調するが、規制は労働者の命と健康を守るための最低限の歯止めだ。

 働いた時間ではなく成果で評価を、との考えは理解できるが、まずは長時間労働の解消に注力し、過労死や過労自殺をなくすことが先決ではないか。過酷な労働環境を肌身で知る過労死遺族が、新制度導入に繰り返し反対していることも重く受けとめるべきだ。


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