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社説

通常国会閉幕 議会制民主主義の危機だ 2017年06月19日

 「意見の違いはあっても、真摯[しんし]かつ建設的な議論をたたかわせ、結果を出していこうではありませんか」

 18日に閉幕した第193通常国会。安倍晋三首相は1月の施政方針演説でそう訴えたはずだ。だが150日の会期中、議論は「真摯かつ建設的」だったとはとても言い難い。指摘された疑惑についても、安倍政権は批判に耳を傾けるどころか、論点をずらし議論はかみ合わなかった。議会のルールを軽視し、数の力に物を言わせる国会運営だけが目についた。

 民主政治は民意に基づく。政権は選挙を通じて有権者に選ばれる。ただし選挙は白紙委任ではない。野党を支持する有権者もいることを自覚し、少数意見を尊重するならば、政権は抑制的に権力を行使するのが当然だが、そうした姿は最後まで見られなかった。

 森友学園への国有地の格安払い下げや加計学園の獣医学部新設を巡る疑惑は、首相や首相夫人に近い人脈に異例の優遇措置がとられ、行政がゆがめられたのではないかというのが問題の核心だった。だが政権は真相解明に後ろ向きの姿勢に終始した。

 「首相から寄付を受けた」と発言した森友学園の当時の理事長に対しては、自民党幹部が「首相に対する侮辱だ」と指摘し、国会での証人喚問に踏み切った。一方で首相夫人や、加計学園を巡り「総理のご意向」などと書かれた文書の存在を証言した前文部科学事務次官の国会招致は拒否。加計学園関係の文書の再調査も会期末になってようやく行った。

 野党の追及に対して首相は真正面から答えず、「印象操作だ」と繰り返した。前文科事務次官の証言の信用性に疑念を呈すためか、菅義偉官房長官による個人攻撃もあった。国会閉幕後も実施が可能な閉会中審査を開き、徹底して疑惑解明を図るべきだ。

 共謀罪の構成要件を取り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、首相は参院審議前に「丁寧で分かりやすい説明を心掛ける」と述べていた。しかし金田勝年法相の答弁は最後まで不安定で、「内心の自由が侵されるのでは」といった国民の不安や懸念は払拭[ふっしょく]できなかった。さらに、会期延長を避け、委員会での採決を省略し本会議採決を強行した。

 国会軽視はこれにとどまらない。2020年までの憲法改正施行を目指すと唐突に表明した首相の発言は、衆参両院の憲法審査会で積み上げてきた議論を全く無視したものだ。

 天皇陛下の退位を実現する特例法などが成立したものの、多くの時間が疑惑を巡って費やされたのは残念だ。財政再建や社会保障制度の在り方など、本来取り組むべき課題の議論は今国会でも置き去りにされた。

 政府提出法案さえ通れば、と考えているようにも映る政権の姿勢は国会を空洞化させ、議会制民主主義に深刻な危機を招いている。国会は国権の最高機関として、もっと危機感を持つべきだ。


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