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「退位」国会見解 総意形成へ一層の議論を 2017年03月21日

 天皇陛下の退位を巡り衆参両院の正副議長は、陛下一代に限り退位を可能にする特例法を整備するのが望ましいとする国会としての見解を取りまとめ、安倍晋三首相に伝えた。政府提出法案の骨格を全党が事前調整するのは極めて異例だ。政府は5月に法案を国会提出し、今国会中の成立を目指す。

 論議の焦点となったのは、退位を実現する法形式だった。自民、公明両党が特例法を主張したのに対し、民進党などは憲法違反の疑いがあると反対し、皇室典範の改正による恒久制度化を求めた。野党には、一代限りの特例法にした場合、将来の退位が否定されかねないとの懸念もあった。

 国会見解は与野党の歩み寄りを念頭に、全党派が皇室典範改正の必要性で一致したと強調。それを実現するための特例法制定だと整理した。典範の付則に、特例法は典範と一体をなすと書き込む案を提示。これによって違憲の疑義を解消し、将来の天皇が退位する際の先例にもなるとした。

 特例法に書き込むべき内容も詳述。陛下による昨年8月のビデオメッセージ以降の経緯などにも触れ、陛下の「意に反しない」ことがくみ取れる形にした。

 とはいえ、示された見解は与野党と政府が実質的な議論をするための土台にすぎない。肝心の内容も、与野党双方の主張に配慮した折衷案の色合いが濃く、明確さに欠ける部分もある。時間の制約がある中で合意を急いだためだ。

 憲法は皇位について「主権の存する日本国民の総意に基く」と定めている。ところが、共同通信社の最新の世論調査では「一代限り」の法整備を支持する回答は27%にとどまり、63%は退位を恒久化する皇室典範改正に賛同している。特例法整備が「国民の総意」とは言い難い状況だ。

 天皇の「象徴」としての務めの在り方という根本的な問題も置き去りにされたままだ。開かれた場で一層の議論を重ね、総意形成を図る必要がある。

 また、民進党が求めていた女性宮家の創設を含む皇位継承の安定化策についての議論は、特例法の施行後に持ち越されそうだ。国会見解は、政府が速やかに検討を加えるべきだとの共通認識に至ったとしたが、検討の期限については「明示は困難」「1年をめど」と両論を併記するにとどめた。

 女性宮家創設は、5年前に当時の民主党政権が検討したものの政権交代で立ち消えになった。安倍首相は女性宮家に否定的で、念頭にあるのは戦後に皇籍を離れた旧宮家の復帰だという。国会でも、皇位継承に関して「男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みなどを踏まえ検討したい」と答弁している。

 自民党内にも女性宮家創設への慎重論は根強い。だが、皇族の減少は差し迫った問題だ。退位への対応が一区切りつくからといって、安定的な皇位継承実現への機運をしぼませてはならない。速やかに与野党協議の場を設け、将来の皇室像を議論するべきだ。


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