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社説

金正男氏殺害 予測困難な体制に警戒を 2017年02月17日

 北朝鮮の金正恩[キムジョンウン]朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男[ジョンナム]氏が、滞在先のマレーシアの空港で殺害された。なお多くの謎も残されているが、韓国当局は北朝鮮指導部が指示、情報機関の偵察総局が犯行を主導したとみている。

 暗殺は金正恩体制が発足した5年前から「永続的な命令」になっていたともされている。あらためて独裁国家の残虐性を世界に見せつけた。

 北朝鮮は日米首脳会談に合わせて新型の中距離弾道ミサイル「北極星2」を発射したばかり。東アジアの緊張が一段と高まる中、日米韓をはじめ国際社会はこれまで以上にその動向を注視し、警戒を強めていく必要がある。

 随所に監視カメラが設置され、多くの人で混雑する白昼の国際空港。自動チェックイン機で手続きをする正男氏に若い女性2人が近づき、うち1人が一瞬の隙をついて接触する。「顔に液体をかけられた」正男氏は助けを求め、救急車で搬送されたが死亡した。

 韓国情報機関は「毒劇物によるテロ」と分析し、凶器に毒針やスプレーが使われた可能性もあるという。まるでスパイ映画だが、それが実行されるところに北朝鮮の“異常性”が見て取れる。

 正男氏はスイスやロシアの国際学校に留学。流ちょうな英語を話し国際情勢に明るかった。故金正日[ジョンイル]総書記の長男として、一時は後継候補に取り沙汰された。しかし2001年、偽造旅券で日本に入国しようとして摘発され、金総書記の怒りを買って後継レースから脱落したとされる。

 父親の葬儀にも参列できなかった正男氏は北京やシンガポールなどで生活。日本メディアの取材に対し、「3代世襲に個人的には反対」「改革・開放に関心を持つべき時だ」と北朝鮮体制を批判したことがある。

 ただ、北朝鮮指導部から疎まれていた正男氏が持っていた機密情報に「大したものはない」との見方も強かった。「政治には興味ない」と権力とは距離を置く姿勢も見せており、金正恩体制を脅かす存在ではなかったはずだ。

 北朝鮮では金正恩体制となって以降、中国との経済パイプ役を果たし事実上のナンバー2だった張成沢[チャンソンテク]氏が反逆罪などの罪名で処刑されたほか、多くの高官らが相次いで粛清、もしくは半ば強制的に引退させられている。

 独裁権力の誇示と維持へ、障害となりそうなものは徹底的に取り除く冷徹さがそこにはある。

 今回の暗殺の背景として、韓国情報機関は金正恩氏の「偏執狂的な性格」も挙げたが、それは核やミサイル開発でも警戒が必要なことを示すものでもあろう。16日は故金総書記の生誕記念日で、北朝鮮ではさまざまな祝賀行事が行われた。国際社会への挑発を加速させる可能性があり、外交的包囲網を強化していく必要がある。

 拉致問題という深刻な課題を抱える日本は、予測困難な金正恩体制にこれからどう向き合っていくのか。改めて検討が必要だ。


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