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新生面

8月13日付 2017年08月13日

 人間国宝の柳家小三治さんが先般の高座で、「アルツハイマーかもしれない」と語った。噺[はなし]家一流のしゃれだろうが、人の名前が出ないことが増えたという。77歳。この年齢になれば、その程度のことがあっても不思議ではない▼認知症になりやすい性格として凝り性があるそうだ。そんなものだろうか。確かに小三治さんはオートバイ、オーディオ、ハチミツなどに凝ってきた。小沢昭一さんの評によれば、「モノゴトを追う徹底さ。追求心が裏にあって、ひとつことを、ああもこうもオモシロク話せる」(「散りぎわの花」)▼数年前、小三治さんを取材した。人気に応えて高座に上がる日々について「もう、へっとへとですよ。とてもつらい。砂をかむどころか、ふくむような思い」と語った。手を抜かない芸を続けることの厳しさを感じた▼上方の桂ざこばさんも先日、脳梗塞での入院から復帰し、高座であいさつした。万雷の拍手を受け、「きょうは絶対泣かへんぞ、と言うてきたのに」と涙を流し、「なかなか人の名前が出てけえへん」と率直に語った。リハビリを続ける。69歳▼先代の桂文楽さんは公演中に人物の名前につまった。すぐに、「勉強し直してまいります」と言って高座を下り、そのまま引退した。このあいさつを事前に練習していたのも、「完璧主義者」と言われた文楽さんらしい。79歳だった▼高齢になると、誰もが記憶力の低下や病気に直面する。噺家も例外ではなく、対処の仕方にも個性が反映する。芸は人なりである。


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